2018 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study on transition path search algorithms in complex biomolecular systems
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16KT0054
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 彰二 京都大学, 理学研究科, 教授 (60304086)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 計算生物物理 / 生体分子シミュレーション / 遷移経路探索 / マルコフ状態モデリング / ヌクレオソームスライディング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、大自由度が関わる生体分子複合体の大規模構造変化において、1)その状態変化を記述できる遷移経路の探索アルゴリズムの開発・実装を行い、それを具体的な細胞生物学的課題のいくつかに適用し、それによって、状態変化の遷移状態を制御する方法を明らかにすることである。 今年度は、昨年度の熱揺らぎによる自発的ヌクレオソームスライディング過程の遷移状態、遷移経路解析を踏まえて、ATP加水分解によって働く分子機械であるクロマチンリモデラーによるヌクレオソームスライディング過程の遷移経路解析を行った。ATP依存的にリモデラーsnf2の構造を変化させ、そのときのヌクレオソーム上のDNAスライディングを、マルコフ状態モデリングによって解析することに成功した。この場合にも、たくさんの短いシミュレーションとマルコフ状態モデルが遷移経路解析にもっとも効率的であった。明らかになったのは、ATP依存リモデラーがヌクレオソーム上のDNAを特定の位置(SHL1.5)で”押す”ことによって、昨年見出した巻き数欠損が2つ出現し、そのひずみがヌクレオソーム全体に伝播し効率よいスライディングを可能にする、というメカニズムである。リモデラーがSHL1.5の位置のDNAを押すと、その片側SHL1では+1塩基を含む巻き数欠損、反対側SHL2では-1塩基対を含む巻き数欠損が生じる。SHL2に生じた巻き数欠損は、比較的速やかにSHL3, SHL4,,と伝播し、片側のスライディングを実現する。一方、SHL1に生じた巻き数欠損はもっとも強固なdyad付近のSHL0, SHL-1,,,をゆっくりと伝播し、もう片側のスライディングを可能にする。研究成果は、PLoS Comp. Biol. 2018に掲載された。その後、関連したリモデリング機構を研究している複数の海外の研究者から問い合わせを受け、共同研究に発展している。
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