2016 Fiscal Year Research-status Report
遷移金属錯体上でのフッ素脱離の遷移状態制御と触媒反応への応用
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16KT0057
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大橋 理人 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60397635)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 遷移状態制御 / 炭素-フッ素結合切断 / フッ素脱離 / ニッケル / 銅 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロヘキシルホスフィン配位子存在下、0価ニッケル上での四フッ化エチレンとスチレンとの酸化的環化によって生じるニッケラシクロペンタン錯体に対し、ジベンジルアミンを加えると、ニッケル上でのα-フッ素脱離が進行し、シクロブチル基を有するニッケル(II)錯体二量体を与えることを見出し、その分子構造を単結晶X線構造解析により明らかにした。一方、アミンとしてトリエチルアミンを用いた場合には、同様のα-フッ素脱離は一切進行しないことを明らかにした。さらに、二座配位子の1つである2,2'-ビピリジンを配位子とした場合にも、α-フッ素脱離の進行は確認されなかった。これらの結果から、アミンの窒素原子上のプロトンが存在していること、および、反応過程において配位不飽和座を生じさせることが有利となる単座配位子がニッケルの支持配位子であることが、α-フッ素脱離を進行させる鍵であることが明らかとなった。現在、α-フッ素脱離の素反応過程における遷移状態を明らかにすべく、理論化学計算に基づくアプローチを進めており、アミン窒素がニッケルに配位すると同時に、窒素原子上のプロトンがα-フッ素脱離によって引き抜かれるフッ素と相互作用を有していることが示唆されている。 また、得られた二量体錯体を溶液中、室温下にて静置すると、さらなるβ-フッ素脱離の進行を経てジフルオロシクロブテンへと変換されることを確認した。これらの実験化学的手法によって得られた一連の成果を専門誌(Angew. Chem. Int. Ed)に投稿し、掲載が決定された。 さらに、ニッケル触媒を用いたアルケンの分子内ヒドロアシル化反応について、理論化学的手法に基づいた機構解析を進め、本反応がニッケル上での酸化的環化を経由して進行していることを明らかにし、専門誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画においては、α-フッ素脱離について実験化学・理論化学という両者のアプローチから検証を進める予定であったが、実験化学アプローチについては、当初計画を越える進捗が見られ、その内容を論文として発表する段に至った。理論化学のアプローチについても、概ね順調に進捗しており、アミン窒素のニッケルへの配位とともに、窒素原子上のプロトンとα-フッ素との相互作用がα-フッ素脱離促進の鍵であることを突き止めた。現在、論文としての成果発表にこぎつけるため、理論化学計算をさらに進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、α-フッ素脱離の機構解明を目指し、理論化学アプローチを進めるとともに、フルオロアルキル銅錯体からのβ-フッ素脱離を鍵過程とする反応について、実験化学・理論化学双方のアプローチから体系的な検討を実施する。
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Causes of Carryover |
当初想定していた実験計画が想定以上にスムーズに進んだため、各種消耗品や試薬、特に、耐圧反応容器としての利用を想定していたガラスオートクレーブ等の少額備品をほとんど購入する必要がなかった。その結果、次年度以降に使用できる金額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、当該年度に購入予定であった各種消耗品や試薬、ガラスオートクレーブ等の少額備品の購入経費に充てる予定である。
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Research Products
(57 results)