2018 Fiscal Year Research-status Report
構造化学的手法による光化学系IIの水分解反応の機構解明
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16KT0058
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梅名 泰史 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(准教授) (10468267)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 結晶構造解析 / 異常分散効果 / 光合成蛋白質 |
Outline of Annual Research Achievements |
光合成で働く光化学系II蛋白質(PSII)の水分解反応中心には、Mn4CaO5クラスター(Mnクラスター)が触媒中心として存在しており、5つの反応中間段階を経て水分解を行っている。この反応サイクルにおいて、各Mnの酸化還元の価数変化が起こり、Mnクラスターが触媒として働いている。本研究では、異常分散効果を利用した特殊な結晶構造解析法により、各反応段階にけるMnクラスターの価数変化とPSIIの構造変化を同時に明らかにする。MnのX線吸収端波長において、価数に応じて異常分散項の強度が変化するため、Mnクラスターの各Mnに対応する異常分散項の電子密度マップを解析することで、個々のMnの価数の特定を行う。 MnクラスターのX線還元が最大の課題であったが、これまでの研究から、50kGy以下であればX線還元の影響が比較的に少ないため、価数情報を捉えることができることがわかった。また、測定温度を15Kの極低温にすることでX線還元が数倍低下することもX線吸収分光で確認できたため、これらの測定条件で実験を行った。また、各段階への遷移には、532nmのパルスレーザーを微小結晶に照射した直後に瞬間凍結することで、状態を固定できることをX線吸収分光で確認しており、各段階の測定ができていることを確認した。 これまでの研究により、PSIIの微小結晶を効率よく励起させ各反応段階に遷移させる手法を確立し、結晶構造解析に持ち込むことができた。しかし、遷移効率は30-60%程度と再現が悪く、また分解能も2.7-3.2オングストロームと再現よく良好な実験結果を確立することがまだできていなかった。次年度に研究を延長することを決断し、測定手法や試料調製の改善を図るつもりである。ただ、これまでの結果から十分にPSIIの価数変化と構造変化の傾向を捉えているため、学術論文として成果をまとめるつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
構造解析の分解能や反応の遷移効率が理想的とは言えないが、構造変化を確認しており、各Mnの価数変化も確認することが出てきいることから、研究としては順調に進展している。延長年度において、現段階で可能な限り改善と再現性を確かめて、学術論文としてまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験では、微小結晶の温度管理が完全でなかった可能性が考えられる。そのため、温度一定に保つ機構を結晶化、結晶のハンドリング、運搬、及びに測定治具への取り付け、全行程の温度管理を徹底する予定である。また、試料の品質を改善するため、より精製純度の高い画分のみの利用を検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたが、少額のため物品購入等で使用することができなかった。
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