2019 Fiscal Year Research-status Report
酵素反応の遷移状態構造を時間依存的に安定化する阻害薬の創製
Project/Area Number |
16KT0060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 孝禎 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (90372838)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2021-03-31
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Keywords | 遷移状態 / 酵素 / 阻害薬 / 速度論的阻害薬 / アイソザイム選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
酵素反応では、酵素と基質が「遷移状態」を形成した後に生成物を生じる。この過渡的にしか存在しない遷移状態とよく似た構造をもつ安定な遷移状態アナログは、酵素の活性中心と直接相互作用するため、高活性、高選択的な酵素阻害薬となり得る。遷移状態アナログは、低分子医薬品創製、遷移状態アナログの免疫による抗体酵素の作製、ケミカルバイオロジー研究、酵素反応機構の解明研究など、さまざまな分野で応用されている。これまでに報告された遷移状態アナログは、基質の構造を基にしたものがほとんどであったが、最近、我々は、一見して基質と全く異なる構造の化合物が 酵素の遷移状態構造を安定化し、高い酵素阻害活性、選択性を示すことを見出した。本研究では、この成果を基に、リシン脱アセチル化酵素(KDAC)アイソザイムの遷移状態構造を時間依存的に安定化する高活性かつ高選択的な阻害薬の創製を行う。 令和元年度は、前年度までに見出したKDACアイソザイムに対し、遷移状態構造を時間依存的に安定化する阻害薬の誘導体を設計、合成し、時間依存的なKDACアイソザイム阻害活性評価を行った。その結果、より選択性、活性の高い時間依存的なKDACアイソザイム阻害薬を見出すことに成功した。現在、そのKDACアイソザイム阻害剤の薬理作用等を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、高薬理活性、低毒性の遷移状態構造を時間依存的に安定化するKDACアイソザイム選択的阻害剤を見出した。さらに、別のKDACアイソザイムに対しても、遷移状態構造を時間依存的に安定化する選択的阻害剤を見出すことにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
遷移状態構造を時間依存的に安定化するKDACアイソザイム選択的阻害剤の薬理活性評価、毒性評価を行うことにより、医薬品としての有効性を確認する。
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Causes of Carryover |
研究代表者である鈴木は、2019年6月に京都府立医科大学医学研究科から大阪大学に異動した。その際、本研究に必要な精密機器(マルチプレートリーダー、ビアコア)を京都府立医科大学から大阪大学に移動したが、精密機器であるため、移動と再立ち上げに5ヶ月の時間を要することとなり、研究が遅延してしまった。以上の理由により、次年度使用額が生じ、本研究の補助事業期間を延長した。
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