2018 Fiscal Year Research-status Report
タンパク質1分子の力学応答計測と 収縮環の再構成による細胞分裂機構の 階層的理解
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16KT0077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮崎 牧人 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (40609236)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞分裂 / 細胞骨格 / アクトミオシン / 再構成 / 人工細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物細胞は細胞分裂時に収縮環と呼ばれるリング状のアクトミオシンバンドルを形成し、その収縮力によって細胞はくびれて分裂する。我々は収縮環の形成・収縮メカニズムを解明するために、精製したアクトミオシンとアクチン線維の束化因子を細胞サイズの油中液滴に封入し、in vitroで収縮環様の構造の自己組織化と収縮に成功した(Nature Cell Biology 2015)。本研究課題ではこの再構成システムと1分子力学計測システムを用いて、収縮環動態の階層的理解を目標とする。
今年度は、昨年度に構築したアクチン線維重合反応の1分子力学応答計測系(Biophysical Journal 2017)と高速カメラを組み合わせることで、アクチンの重合端に局在するフォルミンが、アクチンモノマーを取り込んでアクチン線維を重合させて行く様子をアクチンモノマー1分子の分解能で観察することに世界で初めて成功。10年来考えられてきた定説を一部覆す結果を得て、学術論文として発表した(Nano Letters 2018)。
また、昨年度に構築した大腸菌および昆虫細胞によるアクトミオシンの制御タンパク質発現系を用いて、各種制御タンパク質の発現・精製を行い、それらを油中液滴に封入した再構成系において、収縮環様のアクチンリングが形成される確率と各種制御タンパク質の濃度、液滴サイズなどの関係を定量化した。本研究で得られた成果の一部は、招待講演3件で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究代表者の異動に伴い、実験設備の移設と実験環境の再構築に時間を要したため、実験が全く出来ない期間が4ヶ月生じてしまった。従って、予定よりも研究の進捗は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引続き、アクトミオシンと各種制御タンパク質を封入した油中液滴の系を用いて、収縮環様のアクチンリングが形成される確率と各種制御タンパク質の濃度、液滴サイズなどの関係の定量解析を進めると共に、リングと収縮速度、各種制御タンパク質の濃度などの関係を定量化する。実験で得られた結果を再現できる粗視化モデルを構築し、収縮環の形成・収縮機構を構成するタンパク質の力学的性質から理解することを目指す。
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Causes of Carryover |
研究代表者の異動に伴い、実験設備の移設と実験環境の再構築に時間を要したため、実験の進捗に遅れが生じている。当該年度に予定していた実験に必要な経費が翌年度に繰越となった。繰越分の経費は、主に生化学実験を行うための試薬、消耗品と技術補佐員の人件費に充てる予定である。
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