2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0078
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
澤 斉 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (80222024)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | Wnt / 非対称分裂 / 細胞極性 / Frizzled / PCP |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫C. elegansのほぼ全ての細胞は同じ前後方向の極性を持ち非対称に分裂し、その結果、POP-1/TCFが前側の娘細胞に多くなる。表皮幹細胞(seam細胞)の極性方向は3重Wnt変異体(cwn-1; egl-20 cwn-2)で異常になる(後ろの娘細胞の方がPOP-1が多い極性逆転が増加する)。この表現形はLIN-17/Frizzledの変異によって抑圧される(lin-17 3XWntでは逆転頻度が低下する)。WntがなくてもLIN-17の活性に方向性があり、極性を逆転させると考えられる。この方向性が極性同調の鍵ではないかと考えている。最近線虫の神経発生においてlin-17C末の細胞質領域のリン酸化が重要であることが報告された。そこでリン酸化部位の役割を調べた。egl-20/Wnt単独変異では表皮幹細胞の一つV5の極性方向が逆転するが、さらにlin-17を変異させると逆転は起こらない。lin-17 egl-20変異体にリン酸化部位を変異させたLIN-17を発現させても極性逆転は起こらなかった。lin-17による極性方向制御にリン酸化が関与していることが示唆される。 他の生物では極性の同調にPCP経路の因子、VangやPrickleが関与していることが知られている。線虫においてもvang-1変異体でL2期の表皮幹細胞の非対称分裂が異常になる。L2期には二回分裂するが、1回目の分裂の前側の細胞だけが極性逆転を起こす。また、pry-1/Axinの変異体でも同様に前側の娘細胞だけが極性逆転することを発見した。また、bar-1/βカテニンの変異がpry-1やvang-1変異による極性逆転を抑圧することも発見した。PCP経路とカノニカルWnt経路の両方も極性制御に関与していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LIN-17の方向性を持った活性に、LIN-17の発現勾配が関与する可能性を指摘している。LIN-17を表皮幹細胞で均一に発現させると極性方向に異常が起こる。しかし、この表現形はLIN-17の過剰発現によって起こる可能性が否定できていない。LIN-17を低いレベルで均一に発現させる、または発現勾配を逆転させるのが理想的であり、実験に必要な適切な遺伝子プロモーターを探索しているが未だ見つかっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
LIN-17の方向性を持った活性は、その局在が元々偏っているからだという仮説を立てている。LIN-17::GFPを表皮幹細胞で発現させても顕著な偏りが見られないが、これは過剰発現のためである可能性がある。lin-17自身のプロモーターを用いると、表皮幹細胞だけでなく、周りの融合細胞(hyp7)でも発現するため、膜上のシグナルが、どちらの細胞由来なのか判断できない。そこでLIN-17::GFPをhyp7で特異的に、デグロン法を用いて分解させることを計画している。また、LIN-17自身の局在だけでなく、LIN-17と他のWnt受容体との近接性をBiFC法で観察することにより、方向性を持ったLIN-17の活性を検出することを試みる。 PCP因子VANG-1やPRY-1/Axinの機能を明らかにするため、これらの蛋白やBAR-1/βカテニンの細胞内局在を調べる。
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Causes of Carryover |
連携研究者である研究員(遺伝研の直接雇用)が産休になったため、彼女が使用する予定であった物品費が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
連携研究者は今年度も育休を取る予定であり、消耗品の購入は予定より抑えられると予想しているが、備品として蛍光実体顕微鏡を購入し、研究に役立てることを計画している。
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