2017 Fiscal Year Research-status Report
人工遺伝子回路を用いた細胞パターン形成機構の構成的理解
Project/Area Number |
16KT0080
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
戎家 美紀 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (00544933)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | パターン形成 / 反応拡散 / Nodal-Lefty |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、反応拡散機構で哺乳類培養細胞上に空間パターンを作ることを目指している。これまでに、Nodal-Leftyシグナルの反応拡散系を単純化した人工遺伝子回路をHEK293細胞上に作製した。人工遺伝子回路は、Nodal(アクチベーター)、Lefty(インヒビター)、Co-receptor、下流の転写因子、ルシフェラーゼレポーター、という5つの遺伝子部品から成っている。まず、コントロールとして作製したLeftyを含まない人工遺伝子回路では、最初はレポーター陽性の細胞がランダムに点在しているが、しだいに陽性の細胞ドメインが周囲の細胞に広がって、2日後には全ての細胞がレポーター陽性となった。一方、完成版の遺伝子回路では、初期のレポーター陽性ドメインの広がり方はコントロール回路と似ているが、1日後頃に陽性ドメインの成長が止まり、陽性ドメインと陰性ドメインから成るパターンが形成され維持された。よって、拡散性のアクチベーターNodalとインヒビターLeftyの相互作用によるパターンが作製できた。 さらに昨年度は、このパターンの形成機構を知るべくNodalとLeftyの拡散機構を重点的に調べた。Nodalの細胞外分布は、Leftyにくらべて3分の1程度と非常に狭く、実質1細胞分くらいの距離しか届かないとわかった。これは、Nodalタンパク質内のFinger1と呼ばれるドメインのせいだとわかった。さらにこの時、細胞外のNodalは細胞の下(basal側)に局在していることが観察された。一般的に拡散というと、細胞の上(apical側)や培養液中で起こるイメージだが、Nodalの場合は細胞と培養皿の間に囲いこまれており、これがNodalの拡散が遅い原因と推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Nodal-Leftyによる細胞パターンが作製できた。また、Nodalの拡散がLeftyに比べて遅いのは、Nodal finger1ドメインと細胞の下への局在に原因があるとわかった。さらに、人工遺伝子回路のいくつかの生化学パラメーターを実験的に変化させることにも成功している。よって、計画はおおむね順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞パターンができ、その形成機構もわかってきたので、今後はデータの精度を上げて論文化する。また、パターン形成を説明する数理モデルをいくつか構築しているので、その比較や解析を行う。
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Causes of Carryover |
パターン形成の観察やNodalやLeftyの細胞外分布を測定するための実験条件を確定させるのに思ったより時間がかかったことと、発光イメージング用の顕微鏡が混み合っていたため、繰り返し実験があまりできなかった。よって、それらの実験に使う試薬代などに誤差が生じた。来年度はその分の繰り返し実験も行い、再現性の検証やデータの精度を上げる。
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