2017 Fiscal Year Research-status Report
定量データに立脚した四肢形態形成過程の力学モデルの構築
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16KT0081
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
森下 喜弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (00404062)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 発生動態 / 理論生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
形態形成過程をシステムとして理解するためには、(I) 組織変形動態の解明:器官固有の形態が作られる過程で、いつ・どこで・どの程度、組織が成長・変形したかを数値的に明らかにすること。(II) 組織力学の定量解析:物体の変形を引き起こす直接的な原因は力であり、(I)で明らかとなった組織変形動態を引き起こす組織内応力分布・細胞物性の異方性を明らかにすること。が必須であり、(I)と(II)で得られた変形と力に関する全情報を反映した力学モデルを構築し、想定される形態決定機構の検証と予測を行うことによって初めて形態形成メカニズムを定量的に論じることが可能となる。(I)は申請者の先行研究によって四肢発生過程における体積成長と変形異方性の時空間パタンは分かっている。本研究では形態形成メカニズムを理解するために必須となるもう片方の情報である、組織力学情報に焦点を当てる。四肢発生を対象に、実験研究と理論研究の両サイドから以下の研究項目に取り組む。
【実験課題1】肢芽上皮組織内の応力異方性と細胞形状の時空間マップ作成;【実験課題2】肢芽上皮細胞の物性異方性の時空間マップ作成;【実験課題3】組織内応力・細胞物性異方性を生み出す分子の探索;【理論課題1】連続体シミュレーションによる組織内応力分布の計算と予測;【理論課題2】体積成長と大変形を伴う超弾性体力学モデルの構築と応用。実験・理論課題ともに概ね順調に進んでいる。特に理論課題2に関しては、応力依存的な上皮組織の成長を力学モデルに適切に組み込むことで、実際に観察される肢芽形状の経時的変化を良く再現できることに成功した。これは、四肢形態形成の決定に上皮組織の力学応答の重要性を示唆するものである。この結果は[Kida and Morishita, Finite Elements in Analysis and Design, 2018]に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、【理論課題2】体積成長と大変形を伴う超弾性体力学モデルの構築と応用、に関しては、モデルの構築に成功し、成果を論文に発表した[Kida and Morishita, Finite Elements in Analysis and Design, 2018]。上皮の力学応答と形態形成の密接な関係が示唆された。【理論課題1】連続体シミュレーションによる組織内応力分布の計算と予測に関してもデータを蓄積しており、【実験課題1】肢芽上皮組織内の応力異方性と細胞形状の時空間マップ作成、で得られた結果と整合性が取れていることもあり、計画通り進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、実験課題1と理論課題1に関して得られた結果をまとめること、【実験課題3】組織内応力・細胞物性異方性を生み出す分子の探索に関して、上皮内の力学応答に関連する因子を抑制したときの間葉の応答(変形)を解析すること、【実験課題2】肢芽上皮細胞の物性異方性の時空間マップ作成を進めること、にフォーカスしていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 当初の計画では、計画前半で得られる理論・実験に関するデータの解析やプログラミング補助の目的で研究協力者を雇用して効率的に研究課題を遂行する予定でいた。しかし、理論研究課題が順調に進んだため、そちらを優先的に行い論文掲載まで持っていくこととした[Kida and Morishita, 2018]。データ解析等に割くエフォートは残りの年度で行うことに予定を変更したことが、次年度使用額が生じた理由である。この変更はプロジェクトの遂行の順序が変更になっただけで、全体計画として問題は生じないと判断する。 (使用計画) 次年時以降、データ解析やプログラミング補助の目的で研究協力者を雇用することで使用する予定でいる。
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