2016 Fiscal Year Research-status Report
国際ボランティアが途上国にもたらす変化とグローバル市民社会の形成
Project/Area Number |
16KT0084
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岡部 恭宜 東北大学, 法学研究科, 教授 (00511445)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細野 昭雄 独立行政法人国際協力機構(研究所), 研究所, 上席研究員 (40114128)
関根 久雄 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60283462)
犬塚 元 法政大学, 法学部, 教授 (30313224)
大貫 真友子 独立行政法人国際協力機構(研究所), 研究所, 研究員 (60771912)
|
Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
|
Keywords | 国際ボランティア / 開発 / グローバル市民社会 / 人材育成 / 社会関係資本 / キャパシティ・ディベロプメント / 感情共同体 / 政治思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国際ボランティアが活動地域にもたらす変化と、それがグローバル市民社会の形成に及ぼす影響について分析することである。そして日本の青年海外協力隊(協力隊)を事例に取り上げ、社会関係資本(SC)、キャパシティ・ディベロプメント(CD)、感情共同体という3つの概念を導入して、さらに政治理論・思想史の立場からも考察を行う。28年度の計画は、①先行研究の整理、②意識調査の設計・実施、③海外調査の実施、④研究会の開催である。以下、各項目の実績概要を記す。 ① 各研究分担者が自身の研究テーマ(SC、CD、感情共同体、ボランティア活動に関する政治思想)に沿って先行研究を読解、整理した。 ② 研究代表者と分担者の間で数回にわたり打ち合わせを行い、意識調査の質問項目、実施方法について検討を進めた。 ③ 海外調査については、研究代表者と分担者がドイツ・ボンでの国際ボランティア会議(IVCO 2016)に参加し、SC形成や能力向上に関する研究発表を行った。同時に、韓国国際協力団(KOICA)、国連ボランティア計画(UNV)、イリノイ大学研究者らとの間で、研究や実務動向に関する意見交換を行った。 ④ 研究代表者および分担者全員で9月に第1回研究会を開催し、研究全体の方向性や各自の研究構想・計画について打ち合わせを行った。研究会では、ボランティア活動の開発への効果、個人やコミュニティの能力向上に関する議論が行われたほか、人類学の感情共同体の概念に対する政治思想の立場からのコメントがなされるなど、異なる学問的背景を持つ研究分担者の間で創発的な議論が行われた。 以上の研究実績の一部は、後掲の通り、論文や学会発表の形で発表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究の渉猟や整理は、予定通り進んでいる。 意識調査の設計・実施については、JICA協力隊事務局の業務が多忙であったことや同局幹部の人事交代があったため、同事務局との打ち合わせに遅れが生じたためである。 海外調査について、IVCO 2016への参加以外、途上国での調査は実施できなかった。これは、他国の国際ボランティア組織との人脈づくりを優先し、途上国での調査のための時間が取れなかったためである。しかし、IVCOでの人脈づくりは今後の調査研究の基盤となることが期待される。 研究会の開催は1回のみであったが、集中的な形で行うことができた。 全体としては、初年度の実質的研究期間が半年であったにもかかわらず、論文、学会、書籍での実績を上げることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、前年度の先行研究整理や調査を踏まえて、海外調査をはじめとする、各研究分担者による調査を一層進展させるとともに、意識調査の実施を行う予定である。 海外調査については、一方で、前年度に実施できなかった途上国でのフィールド調査を進めていくが、他方では、IVCO 2017(韓国・ソウル)やUNVの会議に参加し、海外の研究者とも交流を深めていく。 意識調査については、前年度から継続して質問票の設計を行い、JICAの協力隊事務局や研究所との協議を加速させて、早い段階での実施を目指す。 平成30年度は、それまでに蓄積された調査結果をもとに、必要に応じて追加の調査を行いながら、シンポジウムの開催および和英論文や書籍の形での成果発表を行う。
|
Causes of Carryover |
複数の研究分担者が途上国での海外調査を実施できなかったことから、旅費を中心として助成金を次年度に繰り越すことになってしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は海外調査を予定通り実施するとともに、前年度に実施できなかった分の海外調査も実施する。 また、国際的な研究交流を進めるために、国際ボランティア研究に従事する韓国の大学研究者や政府関係者(KOICAなど)を日本に招聘し、ワークショップを開催することを検討している。
|