2016 Fiscal Year Research-status Report
国際移動の実践科学-ソーシャルキャピタルと移住者の就労、生活、健康
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16KT0085
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小澤 弘明 千葉大学, 国際教養学部, 教授 (20211823)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
崎山 直樹 千葉大学, 国際教養学部, 講師 (10513088)
佐々木 綾子 千葉大学, 国際教養学部, 講師 (20720030)
水島 治郎 千葉大学, 法政経学部, 教授 (30309413)
福田 友子 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (40584850)
伊藤 尚子 千葉大学, 大学院看護学研究科, 特任准教授 (60583383)
後藤 弘子 千葉大学, 大学院専門法務研究科, 教授 (70234995)
周 飛帆 千葉大学, 国際教養学部, 准教授 (80270867)
宮國 康弘 千葉大学, 予防医学センター, 特任研究員 (90734195)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 人の移動 / ソーシャルキャピタル / 移民 / 難民 / 人身取引 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究計画期間の初年度として、研究方法の共有を目指し、研究分担者と連携研究者による複数回の研究会をもつとともに、外部の実務経験者を招いた研究会を開催した。また、方法論の錬磨のために、国際学会に参加するとともに、具体的な研究に着手した。 方法論に関する研究会においては、ソーシャルキャピタルの概念についてのこれまでの議論をサーベイするとともに、主としてインタビューを中心とした質的研究法とビッグデータを扱う量的研究法をどのように架橋するかについて議論した。また、移民班、人身取引班、難民班の班別打合せも行った。外部の実務研究者としては、NPO法人難民支援協会から講師を招き、「難民支援の実際と課題」と題して研究会をもった。これには大学院生や学部学生も参加し、大学における理論的研究と実務に関連する課題との関係について議論を行った。さらに、神奈川県勤労者医療生活協働組合港町診療所の医師に講演いただき、難民の生活支援と健康との関係、健康とソーシャルキャピタルとの関連などについて議論を行った。 これに加えて、国際学会としては、難民、外国人労働者、留学生、多文化共生等を主題とする国際メトロポリス会議2016に複数の研究分担者が参加して意見交換を行い、日本集団災害医学会の学術集会に参加して、難民看護や被災地看護についての認識を深めた。また、質的調査としては、日本の介護施設や病院で働くインドネシア人介護福祉士に対するインタビュー調査を行い、移動する人びとの生活実態の解明につとめた。さらに、米国における移民研究の現状を調査するため、大学院生をワシントンD.C.に派遣し、ジョージタウン大学国際移民研究所、移民研究センターや移民政策研究所など研究機関やシンクタンク、NGOの活動と所蔵資料の調査を行わせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、初年度ということもあり、特に海外におけるフィールドスタディでは当初予期したようには研究が進捗しなかった。また、量的調査については準備段階にとどまることになった。このことは課題として認識している。しかし、方法論についての議論を活発に行うとともに、具体的な質的研究にも着手できたことは、今後の研究の基盤を形成する意味を持ったと評価することができる。特に実践科学を目指す本研究の主題に即して言えば、NPO・NGOや医療関係者など複数の立場の実務経験者を招いて、実践に関わる議論と問題点の剔出を行うことによって、方法論の議論をさらに豊富なものにする素地を作ることが可能となった。 また、研究体制の構築という観点から見れば、千葉大学で6月に開催した研究シンポジウム「流動化する社会と移民たちの戦略-教育・キャリア・生活」の振り返り研究会と本科研の研究会は連携し、今後の研究の方向性を探ることになった。さらに、2017年4月に向けて設置準備を行った千葉大学グローバル関係融合研究センターと協力しつつ、特に難民関連の研究協力を行うこととした。このように、研究ネットワークの構築という観点からは顕著な成果を挙げたと言うことができる。 総じて、研究計画の初年度としては、実質的な研究基盤の構築につなげることができたこと、広い研究ネットワークと連携して、今後の研究の発展に資する方向性を見出すことができた。また、研究倫理の委員会も大学に整備され、今後、質的研究を展開する基礎が作られた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、質的調査としては質問票を作成し、具体的な移民・難民等の支援活動に従事している実務者に対するインタビュー、アンケート調査を展開する。また、日本における状況と比較するために、今年度は十分展開することができなかった海外における事例研究・フィールド調査に取り組むこととしたい。特に、千葉大学大学院看護学研究科が展開している災害看護グローバルリーダー養成プログラムと連携しながら、実践現場が抱える問題を質的に明らかにする作業に従事したい。 量的調査としては、千葉大学予防医学センターで蓄積されつつある、健康管理用解析データを用いて、地域住民と医療機関の状況を踏まえた移民・難民のデータ分析に取り組むことしたい。このさい、データの生成過程と移民・難民データの抽出というプロセスについての問題点をクリアすることが必要である。 理論的には、こうした質的調査と量的調査をどのように架橋するか、という課題について引き続き検討を深めるとともに、論点整理のためのサーベイ論文を執筆することを計画している。また、日本における研究のみならず、国際的な研究における位置付けを検証するために、積極的に国際学会に参加するとともに、上述のサーベイ論文も国際的な研究実績と研究動向を反映したものにしたい。 研究体制の構築との関連で言えば、2017年度に発足する千葉大学グローバル関係融合研究センターとの協力関係を深めるとともに、同センターが有する研究資源や研究ネットワークを利用して、より国際的な研究の展開を図ることに注力したい。
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Causes of Carryover |
本年度は、科学研究費補助金の採否の決定が7月となったため、ある程度の準備期間が必要な海外におけるフィールド調査を展開する時間的余裕が比較的少なかった。そのために、具体的な出張計画の立案が遅れたために、海外旅費を十分使用することができなかった。 また、質的調査については、質問票の作成作業に予想以上に手間取り、具体的なインタビューやアンケートを展開する時間が不足した。また、インタビュー担当者の出張のための時間の捻出がうまくいかなかった側面もある。また、研究文献の収集についても、基本文献のサーベイは順調に進んだものの、研究資源の隅々にまで目配りすることができず、収集作業に時間を必要とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
海外旅費については、前年度の反省を踏まえて今年度は早期に出張計画を立案し、必要なフィールド調査に向けて、十分な準備をする予定である。質的調査に関しては、質問票の内容自体についての充実を図ることができたので、今年度の実務作業にスムースに移行することができると考えている。またインタビュアーに関して言えば、大学院生等による調査の代行を含めて、体制の整備につとめたい。資料の収集という観点では、基礎作業は終了したと考えられるため、今後、一層の充実を図ることが可能となると考えられる。
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[Book] Gendering the Trans-Pacific World: Diaspora, Empire, and Race Gendering the Trans-Pacific World inauguration volume (vol. 1) ISSN: 97890043360942017
Author(s)
Denise Cruz, Karen J. Leong, Tessa Ong Winkelmann, Erika Huckestein and Mark L. Reeves, Ji-Yeon Yuh, Rumi Yasutake, Liza Keanuenueokalani Williams, Gladys Nubla, Chrissy Yee Lau, Kimberly McKee,Miliann Kang,Genevieve Clutario, Fang He,Laura C. Nelson, Stella Oh, Nobue Suzuki, Shawn Schwalle,Craig Santos Perez
Total Pages
440(343-365)
Publisher
Brill (Leiden)
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