2017 Fiscal Year Research-status Report
サーキュラー・マイグレーションの研究―EUの政策と帰還後の移民の調査・分析
Project/Area Number |
16KT0090
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
中坂 恵美子 中央大学, 文学部, 教授 (20284127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 利夫 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40304365)
長坂 格 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (60314449)
佐藤 以久子 桜美林大学, 法学・政治学系, 准教授 (80365056)
岡部 みどり 上智大学, 法学部, 教授 (80453603)
片柳 真理 広島大学, 国際協力研究科, 教授 (80737677)
鈴木 一敏 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (90550963)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 移民 / 難民 / 帰還 / 再統合 / ブラジル / ドイツ / EU / スウェーデン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ベルリン、サンパウロ、ブリュッセル、ニューヨークでの現地調査及び文献調査を各自で行い、その成果を持ち寄って2018年4月初旬に研究会を行った。ドイツでは、70~80年代に始まった帰国支援制度に加えて2017年から連邦内務省で新たなプロジェクトが始まり、帰還支援が以前よりも重要性をもつようになっていることと再統合支援への取組みが新たに始まっていることがわかった。サンパウロでは、帰国したデカセギ日系人と帰国後の状況、4世問題等に関して複数の日系人団体から聞き取りと行った結果、これまでに帰国者への現地で再統合支援はほとんどなく、また日本で得た資金や経験を活かして新たな仕事をはじめるケースもあまりないことが理解できた。ただし、介護などの分野で日本で得た技術を帰国後活用する可能性はありうる。EUでは庇護分野に比べると移民分野での政策共通化は進んでいないが、移民の流れの管理という大きな課題への取り組みが必要とされる中で、正規移民の受入れに関して第三国とのパイロットプロジェクトの構想もあり、また国連で草案作成中の移民のグローバルコンパクトに関する関心は市民社会では特に高くなっている。ニューヨークでは世界銀行主席エコノミストを訪問し、国連が主導する「移民のグローバルコンパクトについて聞き取りを行い、国際的な連携枠組みの形成の困難性が明らかになった。特に、難民ではない人々の越境移動を極小化したいEUと、むしろ活発化させることで世界の貧困問題の撲滅を目指す世界銀行(や国連)の立ち位置に大きな乖離があることが看過できない要因であるとの認識に至った。その他、昨年度の現地調査や文献調査に基づいて、南アにおける移民問題と人種差別や帰還との関係、スウェーデンにおける帰還政策や循環移民の状況等に関する研究を進めた。各人の研究をどのようにまとめて全体的にとらえなおしていくのかを議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度中に、現地調査をすべて終える予定であったが、スウェーデンの現地調査及びフィリピンでの現地調査が未実施のままである。それぞれの担当者が他の在外研究や学務等で調整がつかなかったためであるが、次年度の実施に向けて準備をしている。また、日本における難民の問題に関しては、研究を進めるうちに新たな課題も見つかった。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は概ね次のような計画である。① 上記に述べた未実施のスウェーデン及びフィリピンでの現地調査をそれぞれの担当者が行う。②当初の予定どおり、日本の移民に関する調査を行う。まず、日本では、フィリピン人やブラジル人などの動向を調査するために、当事者や関係団体への聞き取り調査を行う。また、日本の出入国管理法の改正や技能実習法等の日本の法制度にも基づいて、技能研修、語学訓練、職業訓練等が実際にどのように行われているのか、改善の可能性や方向性などについても調査する。さらに、研究を進める課程で新たにベトナム人が調査の対象となりうることが判明した。母国の状況変化、特に経済的発展にともなうインドシナ難民の帰国や技能実習生の帰国が近年多くなっている。本件に関しては、日本国内での関係団体への聞き取り調査と、必要な場合は現地調査も視野にいれて進めていきたい。③本グループは学際的なメンバーから構成されるのが特徴であるため、ある程度各自の研究が進んでいる来年度はこの点に関してあらためて議論を行いたい。④研究をまとめることが出来たものは、個別あるいはグループで学会報告や論文執筆の機会をもち、外部への発信を行う。さらに、全体としてのまとめも徐々に議論をしていく。
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Causes of Carryover |
主に、今年度行う予定としていた海外現地調査の一部(スウェーデン及びフィリピン)が、各担当者の都合により実施できなかったことによる。それぞれ、本年度は文献調査により研究を進め、来年度に現地調査のために準備をしている。
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