2018 Fiscal Year Research-status Report
プライベート・ソーシャル・レジームの有効性の比較分析
Project/Area Number |
16KT0093
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
阪口 功 学習院大学, 法学部, 教授 (60406874)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 高敬 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (00247602)
渡邉 智明 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (00404088)
内記 香子 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (90313064)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | プライベート・レジーム / 世界市民社会論 / 認証制度 / メタガバナンス / 有効性 / NGO / エコラベル / サステイナビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プライベート・ソーシャル・レジーム(PSR)の効果的な成長の条件を明らかにすることを目的としたが、今年度は、対抗PSRとして業界主導で設立されたPEFCとの競争に遅れをとっていたFSCが世界木材市場の15.8%(2017年)をしめるまで急増し、カスケード(加速度的増加)の段階に入ったこと、既にカスケードのステージを通過していたMSCが世界水産物生産(天然)の20%をめざし、順調に成長していること、養殖認証(ASC,BAP, GLOBALGAP)についても同様のトレンドにあることが確認された。 他方で、FSCにおいては基準の弛緩(新規のプランテーションを認証対象に含めるなど)や認証審査の弛緩(=認定機関ASIの厳格性の低下)に対してNGOの批判(FERN, Robin WoodなどのNGOがFSCから離脱するなど)が高まっており、マーケットシェアの拡大と基準の厳格性の間に予想されたとおりトレードオフの関係があることこと、FSCのカスケード・ステージ入りにもかかわらずPSRの全体的な有効性は必ずしも高まっていないことが確認された。 水産認証制度は、MSCやASC、BAPなども基準を徐々に厳格化させながら水産物市場でのシェアを大きく拡大しており、PSRとしての有効性を順調に高めていること、その過程でSeafood Stewardship Index(SSI:世界の主要水産会社をベンチマーク評価)やSDG14などのスキームが重要な役割を果たしていることが明らかになった。他方で、FAO水産認証ガイドラインとの準拠性を評価するGSSIのガバナンスが弛緩しており、レジーム複合体としての有効性の今後の向上については不安要因が多いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は担当の分担者1名が在外研究に入った関係で、業界主導のバイオマス認証であるISCCの分析(メタガバナンスを含む)が翌年度に持ち越されるなどの若干の変更が生じたが、森林認証、水産認証での調査は大きく進展しており、おおむね順調に進展していると言える。 途上国のマーケットの拡大の否定的影響については、SDGの取り組みの進展、EUの森林法執行統治貿易(FLEGT)行動プログラムやSSIの取り組みにより、現況としてはPSRの効果的な成長を必ずしも妨げていないことが確認された。もっとも、状況は定まっておらず、今後の長期的なトレンドを注視する必要がある。 また、当初の研究計画では想定していなかった国際制度とPSRの相互作用について、MSCの普及が地域漁業管理機関の規制を強化する要因となっていること、PSRが国際制度の法化水準を上げる作用を有していることなど国際制度とPSRの相互補完的な発展が確認された。気候変動分野の国際制度と森林認証、バイオマス認証との相互作用についても注視する必要があり、継続的にこの課題にも取り組む必要性が確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度となるが、森林、水産、バイオマスの各分野のPSRの有効性の評価の更新を行い、レジーム複合体としての有効性の向上・停滞に、PSRの基準の厳格性(の戦略的な設定)、途上国マーケットの拡大、社会的圧力の高まり、公私のメタガバナンススキームの貢献が有効性に及ぼした影響を相対的に評価する。 特に認証制度のメタガバナンス・スキームであるグローバルベンチマーキングツール(水産ではGSSI、森林ではPEFC、農業ではGLOBALGAP、GFSIなど)がレジーム複合体としての認証制度の発展に大きな影響を及ぼすことから、メタガバナンスのメタガバナンスについての研究にも力を入れていく。これは認証制度と同じようにメタガバナンス・スキームについてもquality controlが必要となるが、メタガバナンス・スキームにはそれを評価する上位の主体やシステムが存在せず、quality controlが不十分となる恐れがあるためである。メタガバナンス・スキームのquality controlが弱いと、レジーム複合体全体としての有効性も高まらない。よってこの点の調査に重点的に取り組む。 企業サイドの分析においては、社会的圧力の増大や国際的な企業フォーラムへの参加が、規範の内面化、生産現場での持続性の取り組みの改善、調達基準の厳格化にどのような影響を及ぼし、それが認証制度の発展にどう作用しているのかを明らかにする。 研究成果の一部は、夏にChinese University of Hong Kongで開催されるRegulatory Governanceに関する国際学会に参加し、本科研費メンバーが3つの報告を行う予定である。また、学術論文としてGlobal Environmental PoliticsやMarine Policyなどの学術雑誌への投稿の準備を進めている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額と差が発生した理由は、①残高の問題で3月末の海外出張(学会)の経費処理が翌年度分で処理されることになったこと、②分担者1名が在外研究に入り、経費執行に部分的な遅れが発生したこと、③分担者1名が学務により海外出張予定が取りやめになったこと、④洋書の納品が遅れ、次年度に処理することになったこと、が原因である。①と④は経費執行時期のズレによるものであり、次年度の早い時期に執行される。②については、次年度の調査旅費に充当し、③については国際学会での報告業務を本年度追加することで執行する予定である。
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