2022 Fiscal Year Research-status Report
中東地域における民衆文化の資源化と公共的コミュニケーション空間の再グローバル化
Project/Area Number |
16KT0098
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
西尾 哲夫 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 教授 (90221473)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 剛 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (90508912)
相島 葉月 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 准教授 (40622171)
椿原 敦子 龍谷大学, 社会学部, 准教授 (00726086)
|
Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2024-03-31
|
Keywords | グローバル・コミュニケーション / 中東 / イスラーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではグローバル化と中東地域の民衆文化に関する以下の研究を実施した。 総合地球環境学研究所との共催で国際ワークショップ「「文明の生態史観」と地球社会」を開催した。また国立民族学博物館グローバル地域研究プログラム(グローバル地中海地域研究拠点・プログラム総括班)との共催で、国際シンポジウム「井筒俊彦の東洋哲学を再定置する」を開催した。また、これまでの議論の総括としての国際シンポジウムとして、The International Conference of Minpaku Special Project “Global Area Studies: Towards a New Epistemology for Mapping the Globalizing World”を開催した。くわえて一般向けに研究成果について広く周知するために、第40回人文機構シンポジウム『人類妄想進化論―文学はいかに地球社会を共創するのか?』を共同事業として開催した。 グローバル地域研究というものに関する理論的考察をおこなうとともに、人間の内面世界と地球規模の現象との関係性を扱う方法論的視座を模索した。グローバル化とデジタル化の急加速は、グローバルデジタル環境の出現、個人と地球社会の間の空間域の流動化、既存の価値(在来知や文明的価値)の資源化、社会の様々なアクターの地球社会の構成員化を生じさせている。地域性をミクロな人間の内面性やマクロなグローバル地域との連関で捉える視点をもちながら、異なる心性の人びとがどうやって違いをこえて地球社会の共創のために協働できるのかという問いに答えるためには、地域性をミクロな人間の内面性やマクロなグローバル地域との連関で捉える視点が必要となるが、既成の関連分野には方法論的視座がなく、本研究課題ではそのような未開拓な研究視座を開拓するための方向性を探ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバルな問題に感応して公共的コミュニケーション空間変容の外部要因として働く事例分析にかかる新たな事例研究としての一連の研究を通じて、グローバルな問題に感応して公共的コミュニケーション空間変容の外部要因として働く事例として、歴史心性としての旧来の世界認識が、個人空間と制度的システム(国家や共同体)との間で生起するナラティブ・ポリティックスに感応して、いかなるグローバルな地域性を獲得しようとしているかについてモデル化をおこない、グローバルに往還する文化現象を類型化し、断片的ではあるが地球社会の認知地図を描こうとしてきた成果は、国際的にも高い評価を受けつつある(参照:Obuse, Keiko and Armand Salvatore. Middle East or “Midlle Earth”?: “Re-orienting” Orientalism and Globalizing Area Studies. In The Oxford Handbook of the Sociology of the Middle East, ed. by Armand Salvatore et al., 2022. 857-876. Oxford: Oxford University Press.)
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も研究方法を継続して課題の解明を図るとともに、研究成果の発信につとめる。 1 「中間アラビア語」による社会空間を接合する言語社会的位相に関しては、先発的なグローバル・コミュニケーション空間の言語社会的位相の分析として、中間アラビア語の文献調査及び中間アラビア語による民衆文学に関する書誌的調査を継続しておこなう。またVilloteauが編纂し手稿のままになっている最初のアラブ音楽事典を校訂し、刊行する。 2 公共的コミュニケーション空間がグローバルな情報ネットワークに感応する社会空間として機能する社会動員的位相に関しては、公共文化の創発プロセスの分析として、グローバル資源化した伝統文化としてアラビア書道をテーマに調査分析をおこなう。また地中海地域の南北における知的ネットワークを体現する一人であるマルドリュスに関するエジプトでの活動に関する調査をおこなう。 海外研究協力者を招聘して国立民族学博物館ならびに人間文化研究機構の「グローバル地域研究プログラム」のなかのグローバル地中海地域研究プロジェクトとの共催でシンポジウムを開催する。成果を取りまとめ学会発表や論文執筆をおこなう。※現在の世界状況に鑑み、上記の海外調査は調査者の安全を考慮し、調査地域や日程を変更する可能性がある。
|
Causes of Carryover |
(理由) 新型コロナウィルスによる世界的な感染状況はおちついてきたが、当初予定していた海外での調査が調査対象である研究機関や大学等の利用制限のために延期せざるをえなくなった。また予定していた招聘計画も相手研究者の健康状態等の理由で延期せざるをえなくなった。 (使用計画) グローバルな問題に感応して公共的コミュニケーション空間変容の外部要因として働く事例分析にかかる新たな事例研究としての国際シンポジウムを、世界の状況をみながら年度内には開催する。グローバルな問題に感応して公共的コミュニケーション空間変容の外部要因として働く事例として、Villoteau編集未刊行『アラブ音楽事典』やマルドリュスの系譜にかかるエジプトでの現地調査を実施する。また研究成果発信のための編集作業をおこなう。
|
Research Products
(10 results)