2016 Fiscal Year Research-status Report
自切する生物から切り拓くスーパーレジリアントなシステムの設計論
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16KT0099
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加納 剛史 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (80513069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 自律分散制御 / クモヒトデ / レジリエンス / ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の人工物は,設計時に想定した稼働環境や使用目的に極度に最適化されており,故障や環境変化に対する適応が困難である.この問題解決のため,本研究ではクモヒトデという,盤と5本の腕からなる棘皮動物に着目した.クモヒトデは,外敵に襲われると腕を自切し,残存腕が何本であろうとも非構造的な実世界環境下を機敏に逃げ回る.即ちクモヒトデは,「故障しないように」設計されている現在の人工物とは対照的に,「故障(身体一部の欠損)を許容する」という戦略を採っている.このクモヒトデの振る舞いは,上位の周口神経環と下位の放射神経からなる極めて単純な分散神経系により実現されている.この事実から鑑みるに,クモヒトデには,下位での部分最適解を上位で統合して全体最適解を導き出す,階層性を有する精妙な自律分散制御原理が内在し,それが「故障を許容する設計」を可能にしていると考えられる. 本研究では,生物実験,数理モデリング,ロボット実機実験を組み合わせた学際的なアプローチにより,クモヒトデのロコモーションに内在する制御原理の解明を目指した.これまでの経過において,周口神経環の切断や腕に圧刺激を与えた際の応答を測定するなどの生物実験を行い,数理モデリングのために必要なデータを蓄積することができた.また,クモヒトデ型ロボットのプロトタイプの製作も行った.29年度以降において,数理モデリングとロボット実機開発を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの経過において,周口神経環の切断や腕に圧刺激を与えた際の応答を測定するなどの生物実験を行った.周口神経環の切断実験においては,腕の根元部の神経系が残存している際は当該腕が適切に動作することができるのに対し,腕を周口神経環から完全に切り離すと当該腕は乱雑な動きを示すことが明らかになった.このことから,腕の根元部がロコモーションに重要な役割を果たしていることが示唆される. 一方,腕に圧刺激を与える実験では,各腕は推進に利する環境からの反力を活用するのに対し,推進を妨げる反力は回避することが明らかになった. これらの知見は,今後数理モデリングをする上できわめて重要な知見である. また,クモヒトデ型ロボットのプロトタイプの製作も行った.これは,今後ロボットを開発する上での基盤技術となる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,得られた生物学的知見をもとに数理モデルを構築する.クモヒトデのレジリアントなロコモーションは,上位の周口神経環レベルと下位の放射神経レベルの2つの階層が有機的に連関した自律分散制御メカニズムにより実現されているはずであり,この点に留意してモデリングを行う. 提案したモデルの妥当性は,シミュレーションおよびクモヒトデ型ロボット実機により検証する予定である.
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Causes of Carryover |
生物実験において,想定していたよりも容易に数理モデリングに有用な知見が得られたため,支出が当初予定よりも少なくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後開発するロボット実機は大量のアクチュエータやセンサが必要であり,それらの購入を行う予定である.
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Research Products
(3 results)