2017 Fiscal Year Research-status Report
脳・全身連関による組織線維化の制御機構の解明と医学応用
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16KT0110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
菅波 孝祥 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (50343752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 宏二 名古屋大学, 環境医学研究所, 教授 (80446533)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 非アルコール性脂肪肝炎 / 慢性炎症 / 線維化 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに、メラノコルチン4型受容体(MC4R)欠損マウスを用いた2種類のNASHモデル(慢性モデル、誘導性モデル)を確立し、肝組織マクロファージ(クッパー細胞)が形質転換することにより組織線維化の起点となるcrown-like structure(CLS)を形成することを明らかにした。 本年度は、CD169がクッパー細胞のマーカーとなることを証明し、クッパー細胞がCLSの主要な構成細胞であることをCD169-DTRマウスを用いて確認した。また、CD11c-DTRマウスを用いることにより、形質転換したCD11c陽性クッパー細胞がCLS形成や肝線維化に必須であることを証明した。さらに臨床研究を実施して、ヒトNASHにおいてもCD11c陽性クッパー細胞がCLSを構成すること、NASHの病勢や線維化と相関することを見出した。このように、従来より知られている浸潤マクロファージに加えて、クッパー細胞もNASHの病態形成に深く関与することを明らかにした。 次に、糖尿病治療薬として最も広く使用されているDPPIV阻害剤を用いて、MC4R欠損マウスに対する効果を検討した。興味深いことに、MC4R欠損マウスではDPPIV阻害剤による糖代謝改善効果や脂肪肝改善効果が認められなかった。一方、CLS形成や肝線維化は有意に抑制されており、代謝改善効果とは独立した抗炎症・線維化効果の存在が示唆された。DPPIV阻害剤の作用機序として、主にGLP-1を介するメカニズムが想定されている。実際、GLP-1は中枢神経系にも発現しており、食欲抑制に働くことが知られている。また、GLP-1受容体は、肝細胞には発現していない。そこで、抗NASH効果が中枢神経系を介する可能性を検証すべく、準備を進めている。このように、MC4R欠損マウスは、DPPIV阻害剤による代謝改善効果が認められないため、中枢神経系と肝臓の連関を検討するユニークな実験系と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝臓における線維化の病態解明は順調に進んでおり、中枢神経系と肝臓の連関を検討する動物モデルの準備も整ってきた。
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Strategy for Future Research Activity |
中枢神経系と肝臓の連関を検討する新たな動物モデルを複数作製することにより、複雑な臓器間ネットワークの全貌の解明を試みる。
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Causes of Carryover |
研究計画の遂行に必要な遺伝子操作マウスを実験を開始したが、一部の解析は次年度に回して、本年度はサンプリングに重点を置いた。来年度中に予定通りの解析を終了する予定であり、計画に変更はない。
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