2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0117
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮寺 浩子 筑波大学, 医学医療系, 助教 (40361464)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | HLA / MHC / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
HLA(human leukocyte antigens:ヒト白血球抗原)遺伝子は、さまざまな免疫系疾患の感受性遺伝子であり、自己免疫疾患、感染症、腫瘍免疫、薬剤副作用(薬疹)等と強く関連する。HLA遺伝子型に基づいた個別化医療を実現するためには、HLAと疾患との関連の機序解明、そして、治療法開発につながる要素技術の開発が必要である。HLAは自己・非自己ペプチドを提示し獲得免疫応答に関わり、遺伝子多型の多くがペプチド結合溝に見られることから、HLAが提示する抗原ペプチドの同定・予測手法を確立することにより、個々の疾患機序の解明が大きく進展すると期待される。これまでHLAクラスIIについては、結合モチーフを基にした結合ペプチド配列予測法が複数提唱されているものの、実際の測定値や結合パターンとの乖離は大きく、今後改良出来る余地は大きい。HLA結合ペプチド予測をより精度高く行うためには、まず、定量性、再現性に優れたアッセイ法を確立し、そのような測定系でHLA-ペプチド相互作用を大規模に解析する必要がある。本研究では、申請者らが既に開発したHLA発現アッセイを応用することによりHLAクラスIIとペプチドとの相互作用測定を多数のHLAアリルおよびペプチドについて網羅的に行う。H28年度は、測定系の高速化のための検出系の検討およびHLA結合ペプチドアッセイを複数の自己抗原・外来抗原を対象として行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、HLAへのペプチドの結合を、細胞表面HLA発現系(Miyadera et al. (2015) J Clin Invest)により測定する。この方法は、HLAとペプチドを融合タンパク質として培養細胞表面に発現させ、HLAの細胞表面発現量を定量することによってペプチドの結合性を推定する方法である。本法は従来法と比較して定量性、再現性が高く、アッセイ間の誤差が小さいため、HLA提示ペプチド探索を大規模に実施する際の標準的手法となりうる。しかし、現時点では本方法は多大な労力を伴い、一定時間に測定できる解析数が限られている。そのためH28年度は測定系の高速化に取り組んだ。まず、フローサイトメータに代わる検出系として、イメージングサイトメーターによる測定を試みた。この方法では、細胞の検出までに要する労力を削減できるため、アッセイ系の高速化は実現できたが、必要となる試薬(抗体)量が増加し、機材(測定用培養プレート)が大量に必要であることから、アッセイ当りのコストが高くなることが分かった。また測定値の定量性はフローサイトメータでの測定の方が高かった。これらの結果から、イメージングサイトメーターでの測定は、目的のHLAアリル産物に結合するペプチドをスクリーニングする目的では非常に有用であるが、結合予測を行うための基礎データ収集という目的には最適ではないと判断するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度の結果を受け、H29年度はHLAペプチド結合アッセイをフローサイトメータを用いて行う。フローサイトメータで測定を行う場合はアッセイ系の大幅な高速化は困難だが、オートサンプラ―を導入することにより労力を削減し、より効率的に測定を行う。この方法で、日本人集団で主要なHLAクラスIIアリルおよび、HLAとの関連が確立されている自己免疫疾患に関わる抗原を対象としたHLA結合ペプチドアッセイを行う。また、がん抗原、感染症に関わる外来抗原を対象として、多数のHLAクラスIIアリル(ハプロタイプ)との相互作用解析を行う。従来のin vitro結合測定法との結果の比較を行い、将来的により大規模なレベルでの解析を行うために必要な知見を蓄積する。また、H28, 29年度の解析結果を論文発表し、国内外の関係分野の専門家とも幅広く意見交換を行うことにより、本方法の欠陥や改善点を早期に見出す。
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Causes of Carryover |
学内移転(耐震工事に伴う)の時期が当初予定より遅くなったことにより、物品購入の時期が予定より遅くなり、同様の理由により研究補佐員の雇用を延期したたため、物品費および人件費の一部を次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費および人件費の一部として使用する。
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