2016 Fiscal Year Research-status Report
被災に伴う医療崩壊と高齢過疎地医療システム再構築のための研究
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16KT0121
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
栗政 明弘 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (80343276)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 晋一 鳥取大学, 医学部, 教授 (30304207)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 少子高齢化 / 医療過疎 / 東日本大震災 / 災害復興 / 訪問診療 / 過疎医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
鳥取県日南町における過疎化と医療環境の調査に関しては、まず日南病院における医療の取り組みと訪問診療に関して調査を行った。日南病院の訪問診療に関して、これまで中心となって組織を立ち上げ、また現在も中心となって日々訪問診療を行っている高見名誉院長にインタビューを行うとともに、訪問診療に同行してその現状の調査を行った。午後の診療時間を町内の訪問診療の対象者10数名に対して、病院の公用車により70-100kmの走行距離を移動しながら順次診療を行っている。訪問診療を行うことで、長期の入院から在宅医療への移行をスムーズに行うとともに、在宅での生活全般をサポートし、過疎高齢化が進む町の医療体制の確立と維持を図っていた。また、医師だけでなく町立病院の医師だけでなく、看護師、薬剤師、保健師、介護士の連携を図るための、地域包括医療センターを中心とした取り組みを調査した。これまで日南方式として全国的にも広く知られている。また、自治体トップの増原町長にも直接インタビューを行い、町のこれまでの取り組みや、これまでの課題や将来計画に関して聴取することができた。 一方、宮城県や福島県双葉郡における被災の現状と復興に向けた取り組みに関しては、医療機関の整備が完了していなかったり自治体職員が多忙のため、調査が進まなかった。当初の計画で予定していた自治体と一部異なった地域の、次の2つの自治体に関して情報収集を行った。まず川内村に関しては、遠藤村長より直接に村の震災復興に対する取り組みの説明を受けた。さらに町内の保健師や住民から村の医療事情や診療体制に関しての情報を収集した。富岡町は平成29年4月に避難指示が解除されたところである。多くの町民は郡山市を中心に仮設住宅や震災公営住宅に居住していた。これまでの住民に対する医療体制や、帰還開始前にすでに診療を開始している富岡町立とみおか診療所の病院長に現状を聴取した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鳥取県日南町における過疎化の問題と過疎医療に関する取り組みに関しては、キーとなる人物や、自治体の中心人物と直接に接触して情報収集ができている。これらに関しては、録音した音声を書き起こし、その内容と今後の課題、将来に向けた計画等を明らかにしていく。 福島県の放射性物質飛散に伴う避難地行きである双葉郡の実態に関しては、復興が進みつつある川内村と、平成29年に期間が始まったばかりの富岡町の情報を中心に収集した。川内村自治体トップの復興に関する考えや、医療機関ならびに医療システムの維持に関する課題に関しての見解を伺うことができた。富岡町では、町立のとみおか診療所の現状と、これからどのように復興に対応していくかの課題について伺った。さらには、南相馬市や浪江町、広野町の現状の把握も試みた。福島県双葉郡の現状に関しては、かなり情報の収集が進んだと考えられる。一方、女川町や七ヶ宿村に関しては、未だ調整が進んでいないところがある。これは、女川町の診療所の改修等が進行中の影響もある。
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Strategy for Future Research Activity |
鳥取県日南町の現状と今後の課題に関しては、住民が実際にどのような医療環境を望んでいるのかを明らかにしていく。 宮城県・福島県の今後に関して、川内村、富岡町に関して、継続的に情報収集を行い、復興の進展と過疎化の現状、医療システムの再構築に関する情報収集を行っていく。宮城県内の自治体に関しては、現状では過疎の課題等は顕著ではなく、まだその課題を把握できていない状況である。今後、協力者を探しながら、調査を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
福島県内の移動に関する費用や、鳥取県への移動に関する費用が予定よりかからなかったため、次年度に繰り越して使用を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は、鳥取県日南町への出張や、福島県、宮城県への調査費にも使用していく予定である。また、報告書の印刷費等でも支出していく。
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