2018 Fiscal Year Research-status Report
質量顕微鏡データによる脳内環境の解読に向けた数理基盤の構築
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16KT0134
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
末谷 大道 大分大学, 理工学部, 教授 (40507167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢尾 育子 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (60399681)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 質量分析イメージング / 多変量データ解析 / 多様体学習 / 神経変性疾患 / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度では、これまでに行なった解析結果をまとめて国際会議(北米神経科学会年会)でポスター発表を行なった。具体的には、まず、野生型マウスおよび遺伝子改変を行なったノックアウトマウスから採取した4つの脳標本スライスに対して質量顕微鏡イメージングによって質量スペクトルを得た。次に、一標本あたり1.5万枚となる質量スペクトル画像列に対して、適当な前処理(スペクトル強度が低すぎるものをカットする等)を施して数千枚程度まで減らした上で、代表的な線形的な多変量解析手法である主成分分析とISOMAPや局所線形埋め込み(LLE)、t-分布確率近傍埋め込み(t-SNE)などの非線形の低次元可視化手法である多様体学習を対象である質量スペクトル画像列に適用した結果を比較した。t-分布確率近傍埋め込みにおいて画像間の距離をコサイン距離にとった場合、主成分分析の結果に比べて物質特性の違いを反映してより詳細なクラスタ構造を得ることができた。しかし、この方法では野生型とノックアウト型の間で分布構造に明確な違いは現れなかった。以上の結果を発表した。 また、昨年度から行なってきた正準相関分析を一般化した方法(「WT同士あるいはKO同士は相関を高く、WTとKOの間の相関は低く」という付加情報を重み係数に反映させた手法)によって野生型とノックアウト型を直接比較する方法を引き続き試みたが、昨年度と同様明確な差を抽出することはできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年度でこれまでの結果をいちおう整理することができたものの(質量スペクトル画像列を低次元空間で可視化する方法)、本科研費課題の主テーマである野生型とノックアウト型マウスの質量スペクトル画像列を直接比較することで神経変性疾患に関わる物質を抽出するという目的を果たせない現状である。また、昨年度は研究分担者の所属機関の異動(浜松医科大学から関西学院大学へ)があったため実験サンプル数を増やすことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
多様体学習によって得られた、低次元空間での質量スペクトルの分布構造について、各クラスタが脳のどのような構造に起因するか明らかにする。これまでの結果から、主要な3つのクラスタは灰白質・白質・マトリクスに起因するするものと思われる。研究分担者が中心となって生化学的に何の物質であるが同定し、低次元空間上で各クラスタが何の物質構造を反映しているのか明らかにする。以上の結果をまとめて論文化する。
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Causes of Carryover |
研究分担者である矢尾育子准教授(浜松医科大学)が2017年度に産前産後休業を取得し、また、2018年度に矢尾氏が関西学院大学への異動(教授に昇進)も決まりその準備等のために全体的に研究の遅延が生じた。それによって次年度使用額が発生した。2018年度に一定の研究進捗があり、国際会議において発表することができたが、論文としてまとめるためにはさらなる追加実験および解析が必要である。そのため研究期間の延長を申請することとなり、それが認められた。予算については、研究代表者は打ち合わせと研究発表のための旅費および論文執筆のための費用に充てる。研究分担者は、打ち合わせと研究発表のための旅費および実験補助のための人件費に充てる。
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Research Products
(1 results)