2016 Fiscal Year Research-status Report
イカ類が表出する体表パターンの言語的意味に関する数理的探求
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16KT0137
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
岩本 真裕子 島根大学, 総合理工学研究科, 講師 (80738641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 頭足類 / 体表パターン / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コミュニケーション時にイカ類が表出する動的で多彩な体表パターンに注目し、その表出パターンに言語的規則を当てはめ、数理的な解読・理解を目的とする。イカ類は下等動物に位置付けられる軟体動物門の一群であるが、小型哺乳類並みに発達した巨大脳と、精巧なレンズ眼という視覚系をもち、これらにより迅速で多彩な体色変化を可能とする。また、記憶・学習に優れた知的側面ももつ。このようなことから、イカ類の体表パターンは、防衛を企図したカモフラージュ(擬態)と同種個体間のコミュニケーションという、複雑な行動に利用されていると考えられているが、その詳細は明らかではない。本研究は行動学と数学の協同により、イカ類の動的で多彩な体表パターンがどのような規則により発現され、維持されるのか、その規則に言語的意味をあてはめて解読し、明らかにすることを目標とする。 本年度は、トラフコウイカにおける体表パターンに焦点を当て、アニメーションを提示することで、以下のような2つの場面における行動実験を行い、体表パターンの観察と記載した。 1)トラフコウイカ成体にコンピュターディスプレイに映じたエビの絵の動画を見せて、その際のボディーパターンを記録する。 2)集団飼育しているトラフコウイカの行動を撮影し、行動文脈に対応させてボディーパターンを解析する。 防衛場面においては、捕食者による発見から捕食までの過程において、パターンが次々に変化していき、それぞれの体表パターンに被験者であるトラフコウイカの心情が表現されている様子が観察された。またその体表パターンの発現順序についても一定の秩序が見られた。 今年度は期間が半年で実験データ数が少ないため、来年度引き続き実験データを収集し、それらをもとに統計処理を行い数理モデルのプロトタイプを構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イカの寿命は1年で、かつ飼育が困難であるため、季節によって実験を行える個体数に大きな差が出てしまう。今年度は期間が半年しかなく個体数が減っていた時期であったため、実験データ数が少なくなってしまった。進捗状況は半年分、遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況はイカの飼育の影響で半年分遅れているが、実験データの数は徐々に増えてきており、課題推進上大きな問題はない。有効な母体数のデータが収集でき次第、統計解析など数理的な手法を用いるとともに、並行して実験データを増やしていく予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は期間が半年であったが、イカの寿命は1年で、かつ飼育が困難であるため、季節によって実験を行える個体数に大きな差が出ることや加熱冷却装置の故障のため個体数が減ってしまい当初予定の実験が行えておらず次年度への繰越分が発生している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
飼育用水槽で使用する水温制御用の加熱冷却装置が故障したため、今年度に予定外の支出があった。進捗状況は半年分遅れている状況ではあるが、飼育環境の劣化による個体数の減少によるものである。現在は環境を整備し実験を行うための飼育が行えているので、繰越分は次年度分と合わせて主に実験で使用する予定である。
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