2017 Fiscal Year Research-status Report
漁業と海獣類の共存に向けた生態系解析と順応的管理のマニュアル化に関する研究
Project/Area Number |
16KT0140
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三谷 曜子 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (40538279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北 夕紀 東海大学, 生物学部, 准教授 (30710917)
山本 麻希 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (90452086)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 漁業との競合 / 海洋生態系 / 順応的管理 / 海獣類 / 海棲哺乳類 |
Outline of Annual Research Achievements |
沿岸漁業において,近年課題となっている海獣類と漁業との共存を実現するためには,被害を軽減しつつ,順応的管理を進めていく必要がある.本研究では,漁業と海獣類の共存に向けた生態系解析を行うことにより,順応的管理のマニュアル化につなげることを目的とした.今年度は,ゼニガタアザラシの食性を性別,成熟段階,季節によって比較し,どの要因が食性に影響を与えるかを明らかにした.また,どのような個体が漁業被害を起こす可能性があるかについて検討した. 襟裳岬に生息するゼニガタアザラシの捕獲,及び混獲個体から腸内容物を採取し,DNA分析した.この結果,オス個体 からはどちらの季節もタコ類が高頻度 (90%以上) で出現しており,メスに比べてタコへの依存度が高いと考えられた.また,サケ類は成獣 5 個体から検出され,サケが検出されなかった個体に比べて体サイズが大きいことが明らかとなった.これらの知見は,有害個体の選択的駆除が漁業被害削減において有効である可能性を示唆している.また,本研究で明らかとなった詳細な食性情報は,アザラシの個体数調整によって漁獲対象種への捕食効果が今後どう変化するのかを推定する上でも非常に重要である. このような漁業との競合は,北海道沿岸においてゼニガタアザラシだけでなく,キタオットセイについても懸念されているが,30年以上研究が継続されているゼニガタアザラシと比較して,キタオットセイでは基礎的知見の蓄積が不足していることが昨年度の情報交換会で明確なものとなった.そこで本年度は,キタオットセイに関して,これまでわかっていること,今後明らかにする必要があることについて,漁業者や行政,研究者が一同に介して勉強会を開催し,そこで課題の共有をすることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで北海道沿岸では明らかになっていなかったゼニガタアザラシの性別,成熟段階,季節による食性の違いを明らかにした.また,国内外での学会での発表も多数行っているほか,論文も発表したことから、当初の予定通り、順調に研究が進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
海獣類について,明らかになっていること,またその課題について,漁業者にもわかるような資料を作成し,発信する.また,陸棲哺乳類による農業被害の対策などと比較することで,順応的管理手法について,マニュアル化を進めていく.
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