2017 Fiscal Year Research-status Report

沿岸域の漁業生産を支える粒状有機物の生態学的機能分類と生態系モデルの高度化

Research Project

Project/Area Number	16KT0143
Research Institution	Tohoku University
Principal Investigator	坂巻隆史東北大学, 工学研究科, 准教授 (60542074)
Project Period (FY)	2016-07-19 – 2019-03-31
Keywords	内湾生態系 / 有機物動態
Outline of Annual Research Achievements	南三陸町志津川湾を対象として，平成28年度までは湾口・湾奥・湾中・湾中カキ養殖場内の4地点にて，平成29年は湾中の1点に絞って季節ごとの採水調査を実施した．粒状有機物をふるい分けおよび濾過により分集した各サイズ画分について，化学的組成（脂肪酸組成，生元素安定同位体比等）分析を行った．有機炭素や脂肪酸でみた粒子量のサイズ分布は季節間で大きく変動し，基本的に外洋における粒子濃度や組成に連動して湾内のそれも変動する傾向が確認された．これら粒状有機物組成の時間変動は，外海における親潮・黒潮の相対的な寄与度にも大きく依存していることが示唆され，特に親潮の影響が顕著な年の春季には最も大きなサイズ画分（20～250μm）で有機炭素量や総脂肪酸量が顕著に大きくなるケースも示された．さらに，粒状有機物濃度のサイズ画分ごとの時間的な変動の大きさを比較すると，より大きなサイズ画分ほど変動が大きいことも明らかとなった．サイズ画分間では，脂肪酸組成も大きく異なっており，一次生産者の種別（珪藻，渦鞭毛藻，細菌，高等植物等）の相対的な存在割合の違いが，そのサイズ画分ごとの時間変動特性にも影響しているものと考えられた．以上より，昨年度実施した栄養塩負荷の増大および水温変動の2種の環境変動に対する各サイズ画分粒子の各種機能（一次生産・呼吸・栄養塩吸収）の応答に関する実験結果とあわせて，実海域における粒状有機物のサイズ画分ごとの化学組成，時空間変動特性，そして環境変動への応答特性が整理された．
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned. Reason 引き続き当初計画に沿って研究を展開する予定である．
Strategy for Future Research Activity	これまでの現地調査および実験から得られた知見を統合して，内湾における粒状有機物動態を機構的に記述する数理生態系モデルの構築を目指す．特に，粒状有機物の機能群間の相互作用を反映できるコンパートメントを記述する．本研究の最終段階では，調査対象地について，陸域から流入する有機物・栄養塩の質・量および水産養殖との関係をふまえ，粒状有機物に着目した環境・生態系モニタリングの可能性や具体的方法を検討する．
Causes of Carryover	H29年度中に当初予定になかった学内予算措置があり，その活用によって本課題に関連する化学分析関連の消耗品購入の際に本予算からの支出を当初予定よりも低く抑えることができた．H30年度それを活用して，現地調査時の採取試料を増やすことで本課題研究にかかわるデータの取得と，成果発表を当初予定よりも拡充させる予定である．