2017 Fiscal Year Research-status Report
社会的紛争における暴力誘発装置としての集団:“集団心理” の実証的検討
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16KT0154
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
縄田 健悟 福岡大学, 人文学部, 講師 (30631361)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 集団暴力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,暴力を生み出す“集団心理”を実証的に解明することである。人間は暴力を嫌うことが多くの心理学の研究から示唆されているにも関わらず,現実の紛争場面は他者への暴力に溢れている。本来暴力を嫌っている人間が,ある場面で暴力を振るうようになるのは一体なぜなのだろうか。本研究が着目したのは暴力誘発装置としての集団の役割である。集団暴行,集団非行,暴動,いじめ,民族紛争とジェノサイドなど,多くの暴力行動は集団で行われる。本研究では,これらの個別テーマの研究の中で散発的に触れられてきた集団が持つ暴力性に対して,集団過程という視点からの統合的理解を試みる。本課題では,第1段階として,初年度は先行研究の理論的レビューを行った。2年目にあたる本年は引き続き先行研究の理論的レビューを行い,書籍化に向けて原稿の執筆を行っている。また,暴力犯罪に関する新聞記事のテキスト分析を行い,集団の持つ暴力性を検討した。新聞記事データベースから,見出しに「暴行・傷害・リンチ」という文字を含む2万件以上の新聞記事を大量に収集し,集団関連語が含まれる記事とそうでない記事の特徴を定量的に比較した。その結果,集団関連語が含まれる記事では,死亡関連語や残虐関連語の出現率が高かった。これらの結果から,集団が関わることが暴力犯罪を激化させることが示された。以上の成果は2017年の日本心理学会第82回大会にて「暴力における集団性の特徴は何か 暴行・傷害・リンチ事件の新聞記事に対する計量テキスト分析による検討」という題目で発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,暴力を生み出す“集団心理”を実証的に解明すべく,第1段階として,初年度から引き続き,先行研究の理論的レビューを行い,集団と紛争に関する書籍としてまとめているところである。また,新聞記事のテキスト分析結果も,1件の学会発表として公表することができ,概ね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き先行研究の理論的レビューとアーカイブデータ分析に取り組みながら,社会調査などの分析にも新たに取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
アルバイト雇用による作業が迅速に進み,予定よりも少ない雇用日数で済んだためである。
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