2018 Fiscal Year Research-status Report
電子ネットワーク上における集団感情とバイアスに関する総合的検討
Project/Area Number |
16KT0157
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
林 勇吾 立命館大学, 総合心理学部, 准教授 (60437085)
|
Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
|
Keywords | 少数派 / 葛藤 / 電子ネットワーク / エージェント / 視点取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は前年度の研究で課題となっていた,問題解決者が知覚する集団に対するポジティブ/ネガティブな感情の表出による認知プロセスへの影響に関する検討を行った.具体的には,林(2014)の仮想集団実験パラダイムを用いて,協同問題解決場面のグループメンバーが課題遂行時にポジティブ/ネガティブな感情の表出をエージェントを用いて操作し,協同問題解決がどのように影響するのかを検討した.実験では,先行研究で明らかにしてきた集団内の異論を唱える少数派のメンバーによって作り出させる葛藤に着目し,集団感情の種類によって思考バイアスがどのように変わるのかを検討した.その結果,集団内の各メンバーがポジティブな感情が表出する発言の頻度が増大するほど,異論を唱える少数派のメンバーに対する視点取得の頻度も多くなることが明らかになった.この分析を加えた研究の成果は,米国の認知科学の雑誌論文である,Cognitive Scienceに研究の成果が掲載された(Hayashi(2018), The power of a "Maverick" in collaborative problem solving: An experimental investigation of individual perspective taking within a group, Cognitive Science, 42,69-104.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の検討を通じて,問題となっていた点に関する検討を行うことができた.またこれらの検討を通じて,最終年度に計画している葛藤解決のための対話のデザインに向けてどのような指標に着目すべきかについての新たな示唆も得られた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,最終年度の計画としてあった葛藤解決のためのユニバーサルな対話のデザインとは何かを探るための検討を行う.ここまでは,集団内でのダイナミックスが生じる場面での検討が中心であったが,個別の事例の分析からは,他者認知や対人レベルでの詳細なコミュニケーションのプロセスに関する検討も必要であることが示唆されている.そこで,次年度はより集団を形成するミクロな単位である対人レベルにおける葛藤解決時に行うコミュニケーションも視野に入れながら,検討を行って行く予定である.
|
Causes of Carryover |
集団実験の実施に際して,複数台のPCを購入して実施する予定であったが研究者の所属する施設(情報教室)で実験を実施することが可能となったため,購入しなかった.次年度は,集団でなく個別実験にて会話データの詳細な分析を実施する予定であり,そのための機材の購入や国際学会での旅費に利用する予定である.
|
Research Products
(2 results)