2017 Fiscal Year Research-status Report
在外米軍がもたらす抑止力の通時的分析――アメリカの同盟政策と地域の平和について
Project/Area Number |
16KT0158
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
籠谷 公司 大阪経済大学, 経済学部, 准教授 (60723195)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 同盟研究 / 抑止政策 / 在外米軍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカの同盟国が安全保障上の潜在的な脅威に晒されている場合の、在外米軍がもたらす抑止効果について、ゲーム理論分析や多面的な統計分析を行うことを目的としている。平成28年度に引き続き、平成29年度も、(1)アメリカ市場が不況に陥った際に、同盟国における在外米軍の駐留を維持することは同盟国を守る意志の表れとなるのではないだろうか、(2)全世界に展開される在外米軍の大きな配置転換は抑止にどのような影響を与えるのか、という問いに取り組んだ。
問1の研究課題についてゲーム理論に基づいたモデル分析を終了することができ、これまで行っていたデータ分析の成果と組み合わせることによって一つの論文にまとめることができた。研究成果によると、アメリカの連邦予算が軍事と経済の間で二律背反の関係にあり、在外米軍の派遣は経済を犠牲にする形で機会費用を発生し、その機会費用の大きさが米国の同盟国を守ろうとする意志と関係していることが分かった。それに加えて、アメリカ市場が好況である場合は余剰を生むため、多くの在外米軍を送らなければ同盟国を守る意思を示すことはできず、アメリカ市場が不況である場合は好況期よりも少ない在外米軍で十分に同盟国を守る意思を示すことができることが分かった。これらの仮説は、日米同盟の時系列分析で支持された。
問2の研究課題については、先のモデルを拡張する形で分析に取り掛かることができた。このモデル分析は、データの予備分析の結果を解釈するのに役立つと考えられる。また、中東からアジアへの在外米軍のシフトがもたらす異なる地域における平和に対する影響を説明することになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
問1のゲーム理論に基づいた分析の初期成果を2017年6月15日から18日まで香港で開催された International Studies Association の国際会議で報告した。そこから半年かけてモデル分析を終わらせることができ、データ分析の成果と一緒に一つの論文にまとめることができた。
この成果は、問2の課題をゲーム理論に基づいて分析する際に必要とされる基本的な問題を解決することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
問1に関する研究成果を2018年4月4日から7日までサンフランシスコで開催されるInternational Studies Association の年次大会で報告を行う。この論文は国際誌へ投稿する。この研究成果については、8月30日から9月2日までボストンで開催される American Political Science Association の年次大会においてもポスター発表を行う。
問2に関するゲーム理論に基づく分析を6月までに終わらせ、7月の Pacific International Politics Conference で報告する予定である。この報告に間に合うようにモデル分析の成果とデータ分析の成果を一つの論文にまとめるように努力する。その後、学会でのコメントを踏まえて改訂し、国際誌へ投稿することを目標とする。
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Causes of Carryover |
平成28年度の内定通知が7月下旬であったため、内定通知よりも前に当該年度の海外出張費を他から確保できたことにより余剰が発生した。その余剰を平成29年度に持ち越したため、同様に余剰が発生した。平成30年度は香港とボストンで行われる国際会議で研究成果を発表するために資金が必要となる。今回の余剰分は、それらの旅費の一部へと割り当てる予定である。
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