2017 Fiscal Year Research-status Report
不斉有機触媒反応の遷移状態における非古典的水素結合の関与の解明
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16KT0164
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
杉浦 正晴 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (00376592)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 遷移状態 / 非古典的水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
筆者は「O-モノアシル酒石酸を触媒とするボロン酸のエノンへの不斉共役付加」を見出し、その選択性の決定段階である炭素-炭素結合形成の遷移状態において古典的水素結合および非古典的水素結合(以下、NCHB)の存在が重要であることが示唆された。近年NCHBは、不斉触媒反応の遷移状態を決める一つの要因であることが、量子化学計算の発展により多数指摘されているが実験的検証はない。そこで本研究では、「本触媒反応系の遷移状態におけるNCHBの関与の解明」により、遷移状態制御の一因を明らかにすることを目指す。2年目である平成29年度は、以下の成果を得た。 (1)NCHBに与える影響を調べるために、昨年度はエノン基質の置換基効果を検討したが、今年度はスチリルボロン酸のベンゼン環上の置換基効果を検討した。パラ位に電子供与基(メトキシ基)や電子求引基(トリフルオロメチル基)を導入したが、選択性は無置換と大差がないことがわかった。現在、反応速度に与える影響を検討している。 (2)昨年度、触媒量の低減化に、Schreinerのチオウレアの添加が有効であることを見出した。今年度は、チオウレアの添加条件における収率・選択性の再現性を検討したところ、無水硫酸マグネシウムの同時添加が有効であることを明らかにした。現在、本条件における速度論的解析によって反応機構の実験的検証を行っている。 (3)本特設研究分野の代表者交流会での出会いを契機に、計算化学を専門とする横浜市立大学の立川仁典教授および岐阜大学工学部の宇田川太郎助教との共同研究を開始した。筆者自身の触媒反応系における置換基効果や重水素置換効果の理論的予測や、山本尚らによるキラルアシルオキシボロン(CAB)触媒の反応系についても理論的検討を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は実験的な検討に加えて、代表者交流会を契機に、横浜市立大学・立川先生および岐阜大学工学部・宇田川先生との理論的な側面からの共同研究を開始することができたことから、今後の進展を期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、重水素化ボロン酸やCAB触媒の合成を進めている。今後も実験的検証と量子化学計算による理論的予測とを合わせることで、実験と理論の両面から研究を推進していく。
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Causes of Carryover |
研究協力者1名が、日本薬学会第138年会(金沢、3月末)で発表予定であったが、体調不良のためにキャンセルした。また、消耗品の購入に当てる予定であった一部が、研究代表者の異動のために消費することができなかった。これらを、異動先(崇城大学薬学部)での備品や消耗品の購入のために、次年度使用することを認めて頂きたい。
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