2016 Fiscal Year Research-status Report
指向的相互作用による自律的皮質回路形成メカニズムの解析
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16KT0171
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤島 和人 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特定助教 (20525852)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 神経回路形成 / 小脳回路 / 樹状突起形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、人工ナノ繊維培養系を用いて小脳直交回路が形成される過程を解析した。この培養系においては、小脳顆粒細胞軸索は人工ナノ繊維に沿って平行に成長する一方、その軸索と接続するプルキンエ細胞樹状突起は、それらに対して直交方向に形成されることがわかっていた。この直交指向は、樹状突起の成長方向が直交方向に限定される、または直交方向以外の突起が退縮し直交方向に伸びたものが安定化するという2通りの可能性が考えられたが、前者が正しいことが明らかになった。また、直交性関連分子Spectrin beta IIIやmyosin IIBをノックダウンした細胞では、伸長方向が無秩序化し、平行方向にも及ぶことが明らかになった。さらに成長動態を解析するために、樹状突起成長端に存在するフィロポディアのダイナミクス観察したところSpectrin betaIII欠損細胞では樹状突起成長端付近に存在するフィロポディアの運動性が増加していることを見出した。この細胞ではフィロポディア形成異常が方向性のある樹状突起成長を妨げる可能性が考えられた。また、これまでにSpectrinファミリー分子が神経突起内でアクチンと協調して反復構造を形成することが示されていた。スペクトリン-アクチンによる樹状突起の膜を裏打ちする強固な構造が、フィロポディアを安定化することが方向性のある樹状突起形成に必要である可能性が考えられた。実際にSpectrin beta IIIはフィロポディア内においても反復性の構造を示す傾向にあることをSTED顕微鏡で観察した。細胞膜におけるアクチン骨格は一般に微小管の動態を制限することが知られる。Spectrin beta III欠損により微小管動態が活発化し、フィロポディア・樹状突起のダイナミクスが無秩序化している可能性がある。微小管プラス端結合タンパク質であるEB3の観察系を立ち上げつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は人工ナノ繊維培養系を用いて小脳直交回路が形成される過程に注目し解析を行った。その過程で直交性は大規模なリモデリングによって形成されるのではなく、プルキンエ細胞の樹状突起が初めから平行線維に対して直交して成長を行うことで形成されることが明らかになった。またこの過程で、当初予見していなかった樹状突起の成長端におけるフィロポディアの動きが無秩序化する傾向を見出した。膜直下に存在するアクチン-スペクトリン複合体が、微小管動態を制御する可能性に思い至り、微小管動態のイメージングを始めている。樹状突起内で微小管プラス端タンパク質EB3の動態の解析をすでに行っており、一定の解析結果を得つつある。このために予定していたアクチン-スペクトリン複合体に組み込まれているadducinやankyrin などの阻害実験を行うことができなかったが、現在準備を進めている。また、本年度は比較的表現型がわかりやすいスペクトリンに主に注目をして研究を行ってきた。次年度以降myosin IIBに関する解析を進め、Spectrin beta IIIが協調して働くのか、あるいはSpectrin betaIIIとは独立に別の経路で直交性誘導に関わるのかを明らかにしていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにSpectrin beta IIIがフィロポディアを含む樹状突起内で反復構造を形成することを示した。また予備実験より、Spectrin beta III阻害下では微小管の動態が活発化する傾向にあり、それがフィロポディア動態を不規則化することを見出しつつある。しかし、Spectrin beta IIIの反復構造と、フィロポディアの動態、軸索-樹状突起の直交性の因果関係は必ずしも明らかではない。以下の実験を行う。 反復構造と直交形成の因果関係を明らかにするためにankyrin やadducin など反復構造に組み込まれうる分子のノックダウンを試み、反復構造形成または直交性への影響を調べる。特にSpecctrin beta III ノックダウンと同じ表現型が得られるかどうか確認する。またフィロポディア動態と直交性の因果関係を確認するために、フィロポディアの動態をより長期間解析して、フィロポディアの動きがどのようにして樹状突起の動きにつながっていくのか解析する。また前年度までにアクチン-スペクトリン構造が微小管のダイナミクスに与える影響をEB3-GFPを用いて微小管のプラス端を可視化して解析する系を開発した。引き続きデータの拡充を行い、定量解析を行う。myosinIIBも細胞表面においてアクトミオシン構造を形成し、微小管と動きを制限する可能性がある。その可能性を確認するとともに、myosinIIB阻害時のSpectrin betaIII構造を観察するなどして、spectrin betaIII とmyosin IIBの関係性を明らかにする。さらに二次元ナノ繊維培養系を重層して三次元へ拡張する実験系の開発を試みる。その構造内に単離したプルキンエ細胞を播種し成長させ、三次元的な突起形成の観察を試みる。
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