2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0179
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松岡 里実 国立研究開発法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (00569733)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 自発性 / 細胞運動 / 細胞極性 / イノシトールリン脂質 / PI(3,4,5)P3 / PI3K / PTEN |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は細胞外からの刺激入力がなくても自発的に運動する。細胞内では前後極性のシグナルが自発的に生成しており、このメカニズムを理解することは生物が利用する自己組織化の原理の理解に繋がる。本研究課題では、前側シグナルであるイノシトールリン脂質PI(3,4,5)P3の代謝系において、自発的シグナル生成に最低限必要な分子反応ネットワークの構成分子種を明らかにすることを目的として、ダイナミクスをリポソーム内で再現する再構成実験を行う。本年度は、このネットワークにおいて中心的な役割を果たすことがすでに分かっているPI(3,4,5)P3代謝酵素PI3KおよびPTENについて、これらのリコンビナントタンパク質をそれぞれ活性のある状態で精製しリポソーム内に封入することに成功した。3'リン酸化酵素PI3Kの基質であるPI(4,5)P2あるいは3'脱リン酸化酵素PTENの基質であるPI(3,4,5)P3を任意の組成で含むリポソームを作成した。PLCdeltaあるいはAkt/PKBのイノシトールリン脂質結合ドメインとGFPとの融合タンパク質を精製してこれらのリポソーム作成時に封入し、PI(4,5)P2あるいはPI(3,4,5)P3に対する蛍光プローブとしての特異性を確認した。さらに、精製した酵素のいずれかを追加してリポソームを作成した結果、リポソーム内でのPI3KあるいはPTENの活性をイメージングにより検出することができた。これらの基礎的技術を元に、今後はPI3KとPTENの同時封入による前後極性シグナルのダイナミクスの再現を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りにPI3KとPTENを同時に封入したリポソームの作成まで達成できた。現時点では、PI(3,4,5)P3、PI(4,5)P2、PI3K、PTENの4成分の存在下で前後極性シグナルのダイナミクスを再現できる条件は見つかっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、上述の4成分がネットワークの最小構成要素である可能性について徹底的に調べる。リポソーム内をより細胞内の状態に近づけるために例えばATP再生系などを導入し、ダイナミクスの再現を目指す。再現できる条件が見つからなかった場合には、PI3Kの活性化に働くことが知られているRasおよびRasの活性化・不活性化因子をリポソームに追加するための実験系の構築に着手する。
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Causes of Carryover |
4成分による再構成系の条件検討を継続しており、外部からリポソームにタンパク質を追加する実験系の立ち上げには着手しなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
外部からリポソームにタンパク質を追加する実験および計画外に導入する実験に使用する。
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