2016 Fiscal Year Research-status Report
現代中国朝鮮族の移動の両極化と二世教育:受入地域としての日韓比較研究
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16KT0180
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
金 英花 宇都宮大学, 基盤教育センター, 特任助教 (30742895)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 先行研究への検討 / 韓国調査実施 / 中国調査実施 / 日本国内調査実施 / 報告実施 |
Outline of Annual Research Achievements |
移動による外国人二世はホスト社会である日本と韓国において、どのような経験をしながら、どのような道をたどって、社会のどの階層に編入していくのだろう。それを解明するためには、受入社会の行政の在り方、教育のあり方も検討しなければならない。本研究では、「中国朝鮮族」を研究対象者として選定し、その二世達が日本と韓国それぞれ異なる政策、社会の中でどのような教育状況に置かれているかを明らかにすると同時に、日韓両社会の受入についても比較研究する。 そのために、初年度である平成28年度には、日本と韓国における外国人二世の受入について全般的に現状を把握しようと心がけ、マクロ的な視点から先行研究への検討と日本、韓国、中国での予備調査を行った。 日本での国内調査は主に、先行研究を通じて日本における中国系の児童生徒の受入の現状について、そして、中国朝鮮族研究の関係者および、朝鮮族の次世代教育に実際携わっている現場の関係者との紐帯関係を築き、今後の研究のための基盤を整えた。東京都荒川区にある朝鮮族の子どもたちが集う週末学校と長崎大学のサイハン・ジュナ准教授を直接伺い、資料と情報を集めた。 韓国には、8月と12月から平成29年1月にかけて2回行き、政府関係者、民間支援者、関連団体から、情報収集および、聞き取り調査を行うことができた。中国は、韓国と同じ時期である年始年末に行き、当事者家族からライフヒストリーの形式でインタビューを行うことができた。 初年度の成果として、12月学内で開催された「岐路に立つ日本と世界」というシンポジウムで「韓国における外国人児童生徒の現状と課題- 日韓比較の視点から」というタイトルで口頭発表を行った。今年度の一番大きな成果は、韓国での外国人児童生徒の受入について全体的な現状を把握したことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基本的には当初の計画通り調査と研究全般を進めることができたと自己評価する。 内容の面では、日本における調査も定期的に行うことの必要性と、先行研究へのアプローチがあまりにも範囲が広がってしまい、これからは絞っていく必要があると感じている。資料収集とデータ管理の面では、作業補助員の協力を得る時期と、実際作業をしてもらう面で予想していたとおりうまくいかなかった部分がある。日本語、韓国語、中国語をすべて自由自在にこなせ、作業に積極的な人がなかなか見つからなく、データの整理とまとめ作業がまだまだ残っている。それが終わり次第、学会投稿を行おうと計画している。 予備調査を通じて大きな範囲からの調査対象者は絞ったものの、まだ研究対象者になれる個々の当事者の特定作業は行われていないことも課題として残った。 最後に、予算の使い方として、物品購入と旅費の使い方は計画通り進めているが、人件費・謝金の使い方と時期の予測、手続きの関連事項を十分把握しておらず、その費目の予算をうまく活用できなかったことを残念に思っている。 一言でまとめれば、研究費の使い方に慣れることと、積極的に周りの人的資源を活用すべきだという教訓を初年度の経験を通じて心得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、何よりも昨年度の調査内容への整理作業とまとめ作業をしっかり行い、それをもとに上半期に学会投稿を先に行う。初年度に行った調査も、先行研究も、アプローチの仕方も範囲が広がった面が少なからずあったので、今年度には前年度のまとめ、内容、範囲、対象などの絞り、研究対象者の特定、そしてそれを踏まえて本調査を広げる形で研究を進めようと考えている。 日本における定期調査に力を入れるかたわら、韓国と中国で本調査を行い、当事者たちを特定し、インタビューを実施する。年度末に成果として発表または投稿をする。資料収集の面では、政策の面での資料を追加収集し、最終年度に行う予定である日韓比較のための下準備を行う。 方法としては、研究補助員や専門家の力を積極的に借りて、一人で全部か抱え込まずに、前々から周りに声をかけて協力を求めることを心掛ける。予算の使い方も積極的に事務職員の意見を聞きながら億劫にならずに人件費など、うまく活用したいと考える。また、大きな出費は前年度と同様に海外と国内出張費が予想される中、現在使っているノートパソコンに不具合が生じたうえに、研究補助員の資料整理作業のためにも新しくノートパソコンを購入するなどの物品購入の面でも予期せぬ出費が予想される。
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Causes of Carryover |
初年度の予算の中で、差額が生じたのは主に、「人件費」と「謝金」、そして「その他」の費目である。 理由としては、①既存のつながりの人との接触が多く、特に謝金が発生しなかったことと、調査時期と補助研究者への協力の依頼の時期にズレが生じ、なかなか予定通り調査結果の整理作業が進まなかったこと、今年度に限っては調査地での通訳や作業補助の必要性が特に生じなかったことなどにある。②もう一つの「その他」の項目では、ビザ取得代や海外旅行保険、調査地での車のレンタル、印刷費用や通信費などを予想していたが、いずれも知り合いのお世話になったり、細かいのは自己負担したりしていたので、ほとんど予算を使わずに済んだ。何よりも、細かい項目の使い方や、手続きなどに慣れていなくて、煩雑を理由に積極的に予算を活用しようとせず、使用ルールを気にしすぎたゆえに億劫になっていたところは少なからずあったと思う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画を進める上で最もかかる予算はやはり海外調査のための旅費である。旅費においては昨年度もぎりぎりまで使ったので、今年度は本調査を行ううえで、それ以上に旅費はかかると予想される。そのため、旅費にもう少し充てようと計画している。 昨年度は一人で奮ってすべての研究課題をこなせようとしてきたが、それが決して好ましい結果として表れるとはかぎらないと心得たので、億劫にならずに、随時所属大学に使用ルールや使い方を確認しながら、研究補助員や専門家の力を積極的に借り、一人で全部抱え込まずに、前々から周りに声をかけて協力を求めることを心掛ける。現地での人の助力も積極的に求め、研究に必要な現地システムなどの資源も積極的に活用する。なお、研究補助者の作業に必要なノートパソコンの購入も考えている。
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