2016 Fiscal Year Research-status Report
南米原産の外来植物が東南アジアに創出する新しい環境の総合的研究
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16KT0183
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 外来種 / 生物学的侵入 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、人や物の移動に付随して意図せず運ばれた植物が、原産地を遠く離れた地域に定着し、世界各地で原生自然に代わる新しい環境を創り出している。本研究の目的は、南米原産の外来植物が東南アジアに創出する新しい環境について、ミクロな生物学的分析を越えて、大陸部アジアを横断する空間的スケールで、生態、社会、文化、歴史的側面もふまえて総合的に研究し、地域に適した環境保全のあり方を考察することである。研究1年目となる2016年度には、2016年11月14-21日と2017年3月17-27日の乾季に、ラオス中部ビエンチャン県トゥラコム郡とナーサイトン郡、ラオス北部シエンクワン県ペーク郡、フアパン県サムヌア郡において、外来植物の分布の広域調査を行った。舗装された幹線道路脇にはヒマワリヒヨドリ、アゲラティナ、シロバナセンダングサ、カッコウアザミ、ナスの仲間などの外来植物が優占し、そのうち南米原産種が最も多かった。南米原産のオオバコエンドロは、家庭菜園で栽培されるだけでなく、道路脇や水田畦畔に野生し、市場でも販売されていた。麺の付け合せの野菜として葉が生食されるだけでなく、香草として料理で広く用いられていた。アフリカ原産のベニバナボロギクは、ラオス語で「日本草」や「飛行機草」など、地域によって異なる名で呼ばれ、それぞれ「第二次世界大戦時に日本軍が持ってきた」「1960-1970年代のベトナム(ラオス・アメリカ)戦争時に飛行機で種が撒かれた」と認識されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価される。2016年度の研究計画は、東南アジアのラオスを重点調査地とし、外来植物の分布と生態について、①幹線道路沿いの広域調査、②村落調査、③文献調査を行う予定であったが、いずれも達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度以降は、ラオスにおける重点調査を継続し、進捗状況に応じて中北部以外に南部も調査地とする。またミャンマーやベトナムにおいても広域比較調査を行う予定である。具体的には、幹線道路に沿って50-100 kmおきにプロットを設け植生調査を行うとともに、近隣住民に外来植物の移入時期と経路、有用性と有害性、現地名について確認する。得られた情報をもとに、大陸部アジアにおける外来植物の推定移入経路を改訂し、アジア全体に敷衍して分析する。さらにペルーにおいて植生調査を行い、ヒマワリヒヨドリなどの原産地における生態を観察する。
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