2018 Fiscal Year Research-status Report
南米原産の外来植物が東南アジアに創出する新しい環境の総合的研究
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16KT0183
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 外来植物 / 東南アジア大陸部 |
Outline of Annual Research Achievements |
人や物の移動に付随して意図せず運ばれた植物は、原産地を遠く離れた地域に定着し、世界各地で原生自然に代わる新しい環境を創り出してきた。外来植物の分布拡大の要因と影響は、個別の植物を既存の枠組みで局所的に分析するだけでは全体像を把握できないため、世界総体を単位として学際的に研究すべき「グローバル・イシュー」である。本研究の目的は、南米原産の外来植物が東南アジアに創出する新しい環境について、ミクロな生物学的分析を越えて、大陸部アジアを横断する空間的スケールで、生態、社会、文化、歴史的側面もふまえて総合的に研究し、地域に適した環境保全のあり方を考察することである。研究3年目となる2018年度には、2018年8月25日から9月7日まで、ベトナム南部メコンデルタ(カントー市とヴィンロン省)からラムドン省ダラットまでの、土地利用ごとの外来植物の分布を調査した。標高0~数mのメコンデルタには水田、野菜畑、果樹園が分布し、アンナン山脈の山麓に入るとパラゴムノキ、マツ、アカシアの植林地、標高約700mを越えるとコーヒー、コショウ、チャの畑が広がっていた。自生する外来植物の分布をみると、山麓ではシロバナセンダングサ(中南米原産)、ニトベギク(中南米)、ランタナ(中南米)、Mimosa pigra(中南米)が多く、標高が上がるにつれて、ヒマワリヒヨドリ(中南米)とマルバフジバカマ(中南米)の出現が増加した。標高約1500mのダラット近郊では、温帯野菜・果樹の栽培が盛んで、標高約1900mのランビアン山山頂周辺ではナス科の1種(中南米)、ハキダメギク(中南米)、ランタナ(中南米)が確認された。ベトナム南部の土地利用は仏領期の影響を強く受けており、外来植物の分布には、気候などの環境要因のほか、土地利用の歴史や、外来植物の移入時期も影響することが示唆された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価される。2018年度の研究計画は、重点調査地であるラオスに加えて、ミャンマーにおいて外来植物の分布と土地利用の履歴の広域比較調査を行う予定であったが、ラオスとともにフランスの植民地となった歴史をもつベトナムに調査地を変更し、カントー大学理学部のサポートのもとで調査を遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は最終年度のため、2018年度までの調査で不足している情報について重点的に現地調査を行う。得られた情報をもとに、大陸部アジアにおける外来植物の推定移入経路を改訂し、アジア全体に敷衍して分析する。また世界の外来植物に関する文献をレビューし、メコン川流域の特徴を明らかにする。そして4年間で得られた知見をまとめ、学会発表や論文投稿のかたちで、成果を発表する。
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