2017 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・バリュー・チェーン革命の功罪とガバナンス体制に関する研究
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16KT0184
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡本 由美子 同志社大学, 政策学部, 教授 (00273805)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2021-03-31
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Keywords | グローバル・バリュー・チェーン / ロックイン効果 / 持続可能な開発 / アフリカ / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、大きく分けて、以下の2つの研究成果を挙げた。まず第一に、国際経済学、国際開発研究の文献サーベイを行い、これまでの理論・実証研究から得られたグローバル・バリュー・チェーン(GVC)革命の功罪についてまとめた。かつ、マクロ、ミクロ両面からアジアとアフリカの比較を行い、アフリカはGVC革命の功罪の外側に存在するのではなく、アフリカもまたその革命の影響をアジアとは異なる形で受けていることを見出し、かつ、その視点が既存の研究に少ないことを発見した。その成果は、「グローバル・バリュー・チェーン革命の功罪-アフリカの持続可能な開発は可能か?」と題した論文にまとめ、刊行した。 第二に、アフリカでも特にサブ・サハラ・アフリカの経済で依然、大きな役割を果たしているコーヒー産業を中心に、GVCへの参入によってもたらされるロックイン効果、及び、新たな格差問題発生メカニズムを明らかにした。具体的には、ウガンダの有機コーヒー小規模生産者組合で行ったインタビュー・アンケート調査を通して、そのメカニズムを明らかにした。その成果は、“Do Standards and Certificates Support SDGs in Global Value Chains? The Case of the Ugandan Organic Farmers’ Association”と題した英文の論文を執筆し、10月にアフリカのガーナで開催される予定の学会発表に応募をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目は研究のスタートが遅れたため、1年目に行う予定であった全体のOverviewが2年目にずれ込んだが、2年目でキャッチアップができた。2年目の冒頭で、マクロ・ミクロ両視点から行った分析により、当初、アジアを中心として行う予定であったGVCsの功罪の研究を、アフリカを対象として行うことに変更をした。その理由は、アフリカはGVCsの革命外に存在しているとの通説とは実際異なる可能性が大きいこと、日本ではアフリカの開発研究が遅れていること、かつ、本研究が最終目標とする持続可能な開発の推進のためには、サブ・サハラ・アフリカの研究が不可欠であるからである。 主な研究対象地域はアジアからアフリカにシフトをしたが、本研究の2年目の目標であるGVC革命の問題点の1つ、ロックイン効果の存在と新たな格差問題の発生メカニズムは順調に研究が進行した。ウガンダの有機コーヒー小規模生産者組合を対象に行った事例研究を通して、製造業だけではなく農産物でも生産者のロックイン効果が発生する可能性があることが明らかとなった。また、GVC革命は、様々な認証制度の存在を背景に、生産者が先進国の企業や消費者と直接繋がり、自ら発展していける可能性を生んだことは大いに評価できる一方、生産者間でも新たな格差問題が発生していることがわかった。つまり、GVC革命は良くも悪くもであるが、アフリカにも大きな影響(功罪)を与えていることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度も、GVC革命の功罪を考える上で、調査対象地域をアジアからアフリカに変更をする。その理由は、平成29年度の現在の調査進捗状況でも明らかにした。ただし、調査対象地域は変更となったが、研究の目的そのもの、最終的に明らかにしたい内容、かつ、その手法に変更があるわけではない。 平成30年度は、平成29年度に開始した有機コーヒー小規模生産者組合とその周りの地域を対象として、3つのグループ(組合農家で認証制度も受けている農家、組合農家であるがコーヒーの認証は受けていない農家、非組合農家)を見つけ、それぞれのグループから調査対象農家を30農家ずつ抽出し、インタビュー調査、アンケート調査を行う予定である。3つのグループを比較することで、GVC革命に参画することで得られる正の効果(認証制度によっては、最低価格の保証、所得の向上等々)及び、負の効果(ロックイン効果、様々なリスクの増大、新たな格差問題)の発生の有無、について明らかにする。研究調査3年目は、コーヒー小規模生産農家が直面しているリスクの特定化、及び、それとGVC革命との関係もさらに深く探って行きたいと考えている。
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Research Products
(1 results)