2019 Fiscal Year Research-status Report
グローバル・バリュー・チェーン革命の功罪とガバナンス体制に関する研究
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16KT0184
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡本 由美子 同志社大学, 政策学部, 教授 (00273805)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2021-03-31
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Keywords | 持続可能な開発 / フェアトレード / 国際認証制度 / ガバナンス / 生産者組織 / グローバル・バリュー・チェーン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究4年目は、フェアトレード(FT)研究をより深め、新しいガバナンス体制構築の可能性を探った。FTがグローバル・バリュー・チェーン(GVC)革命の進展によって生じている問題点をどの程度緩和し、小規模農家の持続可能な開発の促進に貢献し得るのか、そして、そのためにはどのようなガバナンス体制が必要であるのか、事例研究から深く探った。 まず第一に、FTは小規模コーヒー生産者がグローバル・バリュー・チェーン(GVC)のロックイン効果から外れ、持続的な開発を追求する手段にはなり得るが、現在、有機認証とのダブル認証が要求されるようになったため、新たなグローバルな‘規制’(グローバル・リスク)に晒されてしまう、という問題もまた発生していることが明らかとなった。2019年度調査によって、このリスクは前年度の予想をはるかに超えて深刻な問題であることが検証された。 第二に、FTが機能するためには、生産者と消費者を繋ぐ強固な生産者組織(PO)、かつ、アフリカのように国家の概念が脆弱である場合には、国際的なNGO組織が必要不可欠であることもまた明らかとなった。GVCの時代にアフリカの小規模コーヒー生産者が持続可能な開発を追求するためには、グローバル・ニッチを見出し、そのGVCに入ることがその第一歩である。しかし、それは両者を繋ぎ、かつ、自らの組織内のガバナンスをコントロールできるPO、そして、国際的な取引を円滑化するための国際的NGO組織の存在なしには達成し得ない。すなわち、アフリカの貧困問題の解決には、国家、及び、国家を基調として形成されている現在の国際機関の枠組みのみでは不可能であることが明らかとなった。 本年度研究結果のまとめとして日本語と英語の論文1本ずつ執筆を行った。前者は2019年度中に刊行された。後者はすでに査読を終え、2020年度9月に雑誌に掲載されることが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度研究開始当時、以下の4つの研究目的・目標を掲げた。研究目的1. GVC革命が途上国の経済発展に与えるマクロ的な影響を実証的に明確化、研究目的2. GVC革命による新しい格差問題の発生確率とそのメカニズムの解明、研究目的3. GVC革命によって途上国が直面する新たなリスクの種類とそのインパクトの推計、研究目的4. GVC革命に対応した新しいガバナンス体制の模索、であった。手法的には、インパクト評価に代表されるような統計的な分析手法よりも、事例研究を通した質的な調査となったが、1つの事例を通して、アフリカにおけるGVC革命の功罪と持続可能な開発推進のための新しいガバナンス体制の必要性が明らかとなった。 2019年度3月の2週間、ウガンダで現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響を受け、取りやめとなった。そのため、事例研究の数を増やすことはできなかったが、2016年度当初に立てた研究目的は概ね達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの影響次第であるが、ウガンダへの渡航と現地調査が実現できない場合は、現地の研究協力者を通して質的・量的データの取得を試み、研究4年間を通して構築してきた分析的枠組みとその結果をさらに検証する予定である。とりわけ、本研究で取り上げてきたBOFA以外のムバレ地域における小規模コーヒー農家組合にも同結果があてはまるのかどうか、また、アフリカのコーヒー産業の持続可能な開発において非常に重要な鍵を握る女性コーヒー農家の役割について、できる限り、研究を進めたいと考えている。 また、2020年度は最終年度なので、以下、2点を行いたいと考えている。第1点目であるが、予定していた国際会議(コスタリカで開催予定であったGlobelics年次世界大会)が2021年秋に延期になったことを受け、2020年度調査結果を踏まえてさらにもう1本、英語の論文を執筆し、2021年度秋開催予定の国際会議で発表する準備を行う。 さらに、この5年間の研究成果を1つの書籍にまとめる予定である。本のタイトルであるが、変更の可能性はあるが、『持続可能なグローバル社会を求めて』とする予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度3月の2週間、ウガンダに渡航をし、現地調査を行う予定であったが、新型コロナウイルスの影響を受け、渡航中止となったため。 繰越額は427,000円と今年度の助成金は600,000万円で合計1,027,000円である。使用計画は以下の通りである。 ①10日間の現地滞在費550,000円(内訳:渡航費200,000円、滞在費150,000円、車両借り上げ費200,000円)、②現地の研究調査協力費の支払い(1日10,000円 X 20日間=200,000万円)、③英語論文の校閲(1論文=100,000円)、④ノート型PCの購入(Panasonic CF-SV9PF1VU 150,000円)、⑤文具 (トナー、コピー用紙=27,000円)。
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Research Products
(2 results)