2017 Fiscal Year Research-status Report
霊長類遺伝子改変モデルを利用したパーキンソン病の進行・発症機序の解明
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16KT0193
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 謙一 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (90455395)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 神経科学 / 脳神経疾患 / パーキンソン / ウイルスベクター / 霊長類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ウイルスベクターを利用して、進行性の神経変性が数ヶ月以上持続するマカクサルパーキンソン病モデル(アルファシヌクレイン過剰発現モデル)を開発し、このモデルに対し、症状発現前の期間も含めて行動学的解析・組織学的解析・生化学的解析・脳機能画像解析および電気生理学的解析など各種の解析手法を適用することを目的としている。このことにより、パーキンソン病の進行過程における脳・体内状態を明らかにし、症状発現前の病態の進行のメカニズムを理解することによって、パーキンソン病における病態進行の予測や根治療法の開発に貢献する。今年度は、昨年度に作製した数種のドーパミンニューロン選択的なアルファシヌクレイン発現を実現する為のチロシン水酸化酵素(TH)プロモーター搭載アデノ随伴(AAV)ウイルスベクターのマカクサル中脳への注入実験を実施し、その評価を行った。その結果、ドーパミンニューロンにおける効率的な導入遺伝子発現を実現するベクターを確立できたが、その発現選択性にはまだ向上の余地があることが明らかとなった。また、良い結果を得たベクター種において、A30PやA53Pおよびそのdouble mutantなどの変異型アルファシヌクレインを発現するベクターを作成した。さらに、今年度は運動障害の発現時期や障害の程度を解析する為の採餌課題を開発、検証するとともに、多点記録による電気生理学的解析および脳機能画像解析の為の準備を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アルファシヌクレイン発現AAVベクターの改良とベクター注入によるパーキンソン病モデルザル作成パラメーターの検証、において、細胞種選択制に若干の問題を抱えているが、次年度解消できる見込みである。このためアルファシヌクレイン過剰発現パーキンソン病モデルザルの各種解析の解析が遅れているが、これまでにMPTP投与モデルなどを利用してその基盤技術は確立出来たため、次年度に本格的に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ドーパ-ミン細胞選択的発現ウイルスベクターの開発に関しては引き続き行うが、現状で最も良いベクターを利用したアルファシヌクレイン過剰発現パーキンソン病モデルザルの作製を行う。採餌タスクや、独自に開発した片側性モデル用のサル用UPDRSを利用して行動学的解析をおこなうほか、髄液採取による生化学的解析も実施する。注入から1~2ヵ月毎を目処に灌流固定を行なった脳サンプルを作成し、THおよびアルファシヌクレインの染色により導入遺伝子の発現状態やドーパミン細胞死の程度を解析すると共に、免疫組織学的手法あるいはIn situ hybridization法によってパーキンソン病関連遺伝子の発現状態を検証する。このほか、別固体を利用した電気生理学的、および脳機能画像解析を開始する。
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