2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0196
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川上 英良 国立研究開発法人理化学研究所, 科学技術ハブ推進本部, 上級研究員 (30725338)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中岡 慎治 東京大学, 生産技術研究所, 特任助教 (30512040) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 多階層ネットワーク / 分岐現象 / 状態遷移モデル / 時系列解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は疾病発症の予測モデルとしてのネットワークに基づく状態遷移理論構築の基盤として、1.遺伝子制御ネットワークの拡張、2.実際の細胞内プロセスに立脚したタンパク質相互作用ネットワークの構築、3.不均一で散発的な時系列データ解析の枠組みの整備、を行った。 【遺伝子制御ネットワーク】研究代表者のグループは既に3500以上の世界中のマウスのChIP-seqのデータを再解析することで、従来考慮されて来なかった制御の強度を反映した遺伝子制御ネットワークを構築した。本年度はマウスのネットワークに加え、3500以上のヒトのデータを加え、ヒトとマウス両方に対応した遺伝子制御ネットワークを構築した(論文準備中)。 【タンパク質相互作用ネットワーク】タンパク質の細胞内局在情報をUniProtデータベースから取り入れ、さらに機械学習を用いて既知の情報から相互作用の種類や方向を考慮したタンパク質相互作用ネットワークを構築した。現在、構築したタンパク質相互作用ネットワークを用いて、上流制御因子探索アルゴリズムを開発中である。 【時系列データ解析】医学・生物学の時系列データを解析する上で問題となるのが、1.計測時刻が散発的で不規則、2.一つの時系列が短い、3.開始時刻が一定でない、といった性質である。通常の時系列解析の枠組みは、気象や経済のデータのように計測時刻が十分に細かく一定のデータが長期間にわたって取られていることを前提としており、そのままでは医学・生物学のデータに適用することが難しい。そこで、状態空間モデルと逐次ベイズフィルタリングを用いることで散発的な時系列を補完する手法を整備した。今後、実際の測定データにこの手法を適用することで、項目間の相関解析、時系列パターンによる層別化、未来の状態予測を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ネットワーク構築に関しては、当初の予定通り、転写制御ネットワークとタンパク質相互作用ネットワークを構築し、ネットワークを活用したアルゴリズムの整備・応用も進めている。また、時系列解析に関しては、医学・生物学に特有の散発的で不均一な時系列データに適用できる枠組みが整備できた。時系列解析の枠組みの整備は平成29年度以降の計画に含まれていたが、本年度に着手できたことから当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度には、階層間フィードバック・タイムスケールを考慮した多階層ネットワーク解析手法の確立および疾病発症に対応するネットワーク状態遷移モデルの確立に着手する。本年度確立した時系列解析の枠組みをネットワークと組み合わせることで、ネットワークの状態遷移モデルを構築していくことを予定している。
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Causes of Carryover |
本年度は解析環境の整備のために高性能ワークステーションを購入したが、当初想定していた価格より値下がりしていたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度以降に予定しているデータ保存媒体、書籍購入費用に充当する。
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