2016 Fiscal Year Research-status Report
前がん病変から早期肺がんを鑑別する多面的情報統合に基づく予測モデルの構築
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16KT0197
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
白石 航也 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (80609719)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 前がん病変 / 次世代シークエンス / 早期発見 |
Outline of Annual Research Achievements |
進行性肺がんの多くは、分子標的薬等の恩恵により一時的に病勢をコントロールすることができるが、殆どの場合再増悪することから、肺がんは難治性がんの一つである。従って、早期発見・早期治療を行うことで、がん死の抑制に寄与できると考えられる。近年は高解像度CTなどにより、超早期の肺がんまで検出することができるようになったが、一方で前がん病変に対しても手術を施行される場合があり、オーバーダイアグノーシス(過剰な診断)が問題になっている。本研究では、肺がんの中で最も発症頻度が高い肺腺がんに着目し、前がん病変(AAH: 異型腺腫様過形成)からAdenocarcinoma in situ、微小浸潤肺腺がんまでの経時的に観察されるがんの進展過程における遺伝要因並びに環境要因との関連を明らかにすることを目的とする。まずは異時性もしくは同時多発した症例に着目し、同一症例における前がん病変(AAHもしくはAdenocarcinoma in situ)と微小浸潤肺腺がんにおけるがんゲノム異常の差異を明らかにする。今年度は国立がん研究センターにて外科的手術を受けた症例の内、同研究所バイオバンクにて保存されている凍結組織検体30サンプル(浸潤性肺がん、Adenocarcinoma in situ、非がん肺組織が同時に揃った10症例分)よりQiagen社AllPrep DNA/RNA/miRNA Universal Kitを用いてDNAを抽出した。来年度は次世代シークエンサーを用いて、ゲノム解析を行う予定である。また公共データベースを参照し、本研究に活用できる症例の抽出やゲノム情報の収集に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいる。解析に必要な症例の収集がおおよそ終了し、次世代シークエンスを用いた解析の準備が整った。研究計画どおり、来年度は次世代シークエンス解析を行い、体細胞系列変異の情報を取得する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を通して、前がん病変から肺がんに至る複数の病態進行段階におけるゲノム情報や体質(SNP: 一塩基多型)、生活習慣、生理学的検査結果を多面的に統合解析することで、今まで個別に解析されてきたものよりも精度の高い発がんリスク予測モデルの構築に向けた基盤情報を提供する。同一症例における前がん病変(AAHもしくはAdenocarcinoma in situ)と微小浸潤肺腺がんにおけるがんゲノム異常の差異を明らかにするとともに、既に得られている浸潤性肺腺がん症例の全エクソンシークエンスデータを基に、特徴的な遺伝子異常の蓄積の有無を検討する。そのため次年度は、収集された試料に対して次世代シークエンスを実施し、体細胞変異の情報を取得する。また公開データベースなどを参照し、BAC (現:Adenocarcinoma in situ)などのゲノム情報や診療情報を収集し、検証研究用として同様の解析を行うための準備を進める。
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Causes of Carryover |
研究の開始が9月からであったため、次世代シークエンスを行うための試料の準備に時間を必要とした。また次世代シークエンスの使用期限は半年と短く、またロットによる影響を考慮し、解析が開始できる時期に合わせて購入した方が再現性のあるデータを得られると考え、次年度への繰越を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に次世代シークエンスを実施する。
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