2005 Fiscal Year Annual Research Report
機能的神経ネットワークの構築と制御の分子メカニズムの研究
Project/Area Number |
17002016
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
中西 重忠 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 所長 (20089105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡澤 慎 (財)大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (40414130)
黄檗 達人 (財)大阪バイオサイエンス研究所, システムズ生物学部門, 研究員 (50414131)
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Keywords | 小脳 / 基底核 / 神経ネットワーク / 神経伝達 / 記憶 / 薬物依存 / 発達 / 運動 |
Research Abstract |
本研究は入力と出力が定量的に解析出来る運動系の小脳と大脳基底核の神経回路に焦点を当て以下の研究を進めた。 1.小脳発達期の神経回路構築機構:小脳顆粒細胞は生後、増殖、分化、移動し、その後成熟したシナプスを形成する。我々は未成熟顆粒細胞が成熟するにつれて静止膜電位を脱分極から非脱分極に移行する事に着目し、初期培養顆粒細胞を脱分極及び非脱分極化しその結果発現誘導を受ける遺伝子の同定、小脳顆粒細胞の発達との関係及びそのメカニズムを追求した。この結果、脱分極及び非脱分極によってそれぞれ未成熟顆粒細胞の増殖、分化、移動に関わる遺伝子と成熟細胞のシナプス成熟にかかわる遺伝子を誘導する事、また膜電位で変化するCa^<2+>とCa^<2+>依存性カルシニューリンがこの発現調節に鍵となる事を明らかにした。さらに成熟時に誘導されるNMDA受容体NR2Cの発現誘導には、カルシニューリンとBDNFの協調的な制御が働くという新しい機構を明らかにした。 2.小脳神経回路の制御機構:小脳神経回路において興奮性神経伝達を可逆的に制御出来る変異マウスを作製する事に成功し、このマウスを用いて運動記憶の典型である条件付き瞬目反射の獲得と発現が可逆的に制御出来る事を示した。またin vivoの小脳プルキンエ細胞の反応性を電気生理学的に測定出来る系を確立し、小脳性運動記憶の獲得と発現における小脳神経回路の神経伝達の変化の解析を進めている。 3.大脳基底核の神経回路の制御と可塑性の機構:大脳基底核の神経回路においてはドーパミンと基底核に局在するアセチルコリンが拮抗的かつ協調的に作用して基底核の伝達を制御し運動のバランスと薬物依存の誘導を調節している事、さらに大脳皮質からのグルタミン酸神経伝達の前シナプス性の新しい制御機構を明らかにした。基底核の主要な細胞は形態学的に同一の直接路と間接路の2種類の神経細胞からなる。それぞれを蛍光蛋白で識別出来るトランスジェニックマウスの作製を進め、直接路、間接路の主要細胞に対するドーパミン、アセチルコリン、グルタミン酸の相互作用と作用の違いの解析を解析する研究を進めている。
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