2005 Fiscal Year Annual Research Report
インターネット使用が子どもの精神的健康・社会的適応に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
17011020
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
坂元 章 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (00205759)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高比良 美詠子 お茶の水女子大学, メディア教育開発センター, 助教授 (80370097)
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Keywords | インターネット使用 / ソーシャルスキル / 攻撃性 / 抑うつ / 因果関係 / パネル調査 / 調整変数 |
Research Abstract |
前年度までに行ってきた研究の結果、インターネット使用は、子どもの心身の健康状態を悪化させたり、攻撃性の一部を高めるなどの悪影響を持っている可能性が示唆された。そこで、本年度は、このようなインターネット使用の悪影響を緩和する「調整変数」の探求を行った。主要なものとしては、関東圏の高校1年生570名(男子362名、女子208名)を対象に、2時点のパネル調査を行った。調査で用いられた質問紙には、(1)日常生活におけるインターネットの使用量、(2)以前の研究で、インターネットの使用により悪影響が見られた変数(攻撃性や心身の健康)、(3)インターネット使用の悪影響を抑える上で重要であると思われる調整変数(社会的スキル:対人関係を円滑に運ぶために役立つ技能)を測定する項目が含まれていた。 そして、社会的スキル(調整変数)の高低により、インターネット使用が、心身の健康状態や攻撃性に与える影響が異なるかどうかを検討するために、構造方程式モデリング(SEM)による多母集団同時分析を行った。その結果、多くの場合、社会的スキルが低い子においてのみ、攻撃性や心身の健康に対するインターネットの使用からの悪影響がみられることが明らかになった。インターネット上のやりとりは、視覚的匿名状態の中でテキストを主体として行われるため、対面状況でのやりとり以上に、対人関係を円滑に運ぶための技能が必要になると考えられる。そのため、このような社会的スキルを十分に身につけていない子どもの場合、インターネット使用の悪影響を強く受けてしまう可能性がある。 このように本研究の結果から、発達の途上にある子どもに対しては、インターネットの使用技術のみならず、人間関係を円滑に営む上で必要になるスキル(技能)を幅広く身に付けさせていくことが、インターネット使用の悪影響を抑える上で重要だということが示唆された。
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