2005 Fiscal Year Annual Research Report
手作りの測機で身近な気象を観測し新事実に挑む参加型科学プロジェクト
Project/Area Number |
17011043
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
酒井 敏 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 助教授 (30144299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
余田 成男 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30167027)
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Keywords | 理科離れ / 理数教育 / 気象観測 |
Research Abstract |
以前の観測で、夜間の雲の出現に伴うものと思われる短周期の温度変動が郊外で観測されたことから、雲センサーとしての放射温度計を南北に配置し雲の出現時刻を正確に記録することにし、春夏秋冬各季節の5月、8月、10月に、京都市内の約40点に観測器を設置し2-3週間の連続観測を行った。その結果、郊外では夜間に雲が出現すると比較的短時間に1℃弱気温が上昇するのに対して、市街地中心部では雲の出現に伴う温度変化がほとんど認められないごとがわかった。これは、晴天時には大気からの赤外線放射がほとんどなく、強い放射冷却が起こるのに対して、雲が出現すると雲からの赤外線放射により地表面が暖められることによる。雲からの赤外線放射は都市中心部でも郊外でも変わらないので、気温の上昇幅の違いは地表面付近の熱慣性(地表面または建物表面から、単位時間に熱が伝わる部分の熱容量)の違いによる。すなわち、郊外では地表面が畑の植物や木造の建物など、熱容量の小さなものに覆われているのに対して、都市中心部では鉄筋コンクリートやアスファルトなど熱容量の大きなもので地表面が覆われていることによる。このことから、少なくとも京都のヒートアイランド現象の主要な原因は人口廃熱ではなく、熱慣性の違いによるものであると考えられる。 このように、高校生でも自作できる測器を使って、高校生と一緒に行った観測で、社会的にも大きな関心が寄せられているヒートアイランド現象のメカニズムを解明するという学術的にも大きな意味のある結果が得られた。もちろん、最終的な結論に至る部分では高校生の手に負えない部分も多くある。しかし、自分たちが作った測器で第一線の研究ができることを目の当たりにした効果は極めて大きい。また、同じ測器で観測し、同じデータを手にしていながら、大学生との決定的な差を見せ付けられたということも、大きな刺激となっていることは間違いない。
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