2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクター・ピロリ感染を基盤とする胃がん発症機構とその制御
Project/Area Number |
17013001
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
畠山 昌則 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (40189551)
|
Keywords | ヘリコバクター・ピロリ / CagA / β-catenin / 腸上皮化生 / 胃癌 / Cdx1 / SHP-2 / 多量体化 |
Research Abstract |
ヘリコバクター・ピロリ菌CagAがチロシンリン酸化非依存的にE-cadherin/β-catenin複合体を不安定化し、細胞膜からのβ-cateninの細胞質・核への遊離ならびに核内におけるβ-catenin依存的な転写活性化を引き起こすことを明らかにした。さらにCagAにより誘導されるβ-catenin標的分子として腸上皮細胞分化のマスターレギュレーターと考えられるCdx1転写因子を同定した。胃上皮細胞にCagAを構成発現させたところ、腸上皮マーカーとして知られるMUC-2が誘導された。ピロリ菌感染における胃粘膜の前癌病変として腸上皮化生が知られており、そのの誘導メカニズムとしてCagAによるβ-cateninシグナル依存的なCdx1の異所性発現が関与する可能性が示唆された。 CagAはチロシンリン酸化依存的にSHP-2癌タンパクと結合しそのホスファターゼ活性を脱制御する。今年度の研究から、このCagA-SHP-2複合体形成においてCagAの多量体化(おそらくは二量体化)が重要な役割を担うことが明らかとなった。大腸菌で産生した組換えCagAは単量体で存在することから、CagAの多量体化は宿主細胞内に侵入して初めて起こる現象と考えられ、CagAと結合する未知の宿主タンパクの存在が示唆される。多量体化に必要なCagAの分子内配列としてEPIYA-CないしEPIYA-Dサイトの直後に存在する16アミノ酸からなるCagA多量体化配列を同定した。この配列を欠くCagAはSHP-2と安定的な複合体を形成できない。また、CagA多量体化配列を有する一方SHP-2と結合できないリン酸化抵抗性CagAは野生型CagAのHummingbird表現型誘導に対してdominant-negative効果を発揮することが示された。 樹立したcagAトランスジェニックマウスの解析から、生後12週以降のマウスにおいて胃粘膜の有意な肥厚と胃上皮細胞の過増殖が確認された。この結果から、CagAは胃上皮細胞の増殖を促進する能力を有していることが確認された。
|
Research Products
(16 results)