2005 Fiscal Year Annual Research Report
ジーンターゲティング法による多段階発がん機構の解析
Project/Area Number |
17013006
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
野田 哲生 (財)癌研究会, 癌研究所, 所長 (10183550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八尾 良司 (財)癌研究会, 癌研究所細胞生物部, 主任研究員 (80291095)
高野 洋志 東北大学, 大学院医学系研究科, 助手 (00241555)
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Keywords | 遺伝学 / 遺伝子 / 癌 / ゲノム / シグナル伝達 / モデル動物 |
Research Abstract |
本計画班では、マウス遺伝学を用いて、各種シグナル伝達系が発がん過程において果たす役割を解析している。本年度は、Wntシグナル関連分子の機能と、その発がんへの関与に関する解析で多くの有用な知見が得られた。これまでの解析から、Apc遺伝子の肝細胞特異的な不活化が、βカテニンの蓄積によるWntシグナルの活性化と肝の肥大を引き起こすことが明らかになっていたが、本年度は、ここでさらにβカテニンの不活化を誘導したところ、このマウスは正常に発生・発達すること、しかし生後約一年を経過した段階で、高頻度で肝細胞がんが発生することが明らかとなり、Apcの不活化がβカテニン非依存性に発がんを誘導する可能性が示唆された。我々はWntシグナルの下流で機能する遺伝子としてTACC-3を同定したが、本年度は、その発現量がWnt添加により減少することが明らかとなり、さらにコンディショナルノックアウトを用いた解析から、その不活化が細胞分裂時の染色体分配異常を引き起こし、その結果、染色体数の異数性をもたらすことが明らかとなった。これらの結果は、Wntシグナルの亢進による発がん過程に、新たな分子機構が関与する可能性を示唆するものである。最後に、Apc変異マウスにおける消化管発がんを強く抑制するマウスの遺伝的背景に関する解析では、その活性を野生型由来近交系マウスの第10番染色体上の約0.9Mbの領域にまで絞り込むことに成功した。この領域内には三つの遺伝子が存在するが、それらの一次構造および消化管における発現レベルを比較したところ、一つの遺伝子にはアミノ酸の変化を伴う遺伝的多型が同定され、また違う遺伝子で、その発現レベルに大きな差が認められた。この責任遺伝子を同定し、その発がんにおける機能を明らかにすることは、新たな発がん予防につながるものと期待される。
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