2005 Fiscal Year Annual Research Report
血球の分化係統特異的な白血病化-転写因子機能の選択的な脱制御
Project/Area Number |
17013009
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐竹 正延 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (50178688)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河府 和義 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (00361189)
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Keywords | 白血病 / 転写因子 / キメラ遺伝子 / 遺伝子発現 / マイクロアレイ / アイソフォーム蛋白 / トランスジェニック・マウス / Tリンパ球 |
Research Abstract |
(1)ヒト急性骨髄性白血病(AML)のサブタイプで最も頻度の多いのは、Runx1/PEBP2β転写因子をコードする遺伝子の異常である。即ち、M2型t(8;21)とM4E型inv(16)により各々、Runx1-MTG8とPEBP2β-SMMHCキメラ遺伝子が生成される。両キメラ蛋白は内在性のRunx1/PEBP2β転写因子に対して、ドミナント・ネガティブに作用することが知られている。50例のAML症例の骨髄サンプルよりRNAを抽出し、オリゴヌクレオチド・マイクロアレイを用いて、遺伝子発現のプロファイルを得た。内訳はt(8;21)を有するM2サブタイプ(G1)が8例、t(8;21)を有さないM2(G2)が5例、inv(16)を有するM4サブタイプ(G3)が7例、inv(16)を有さないM4(G4)が7例、その他のサブタイプ(G5)が23例であった。有意に(p>0.05)2倍以上の変動を示す遺伝子を抽出した所、G1でupの22個、G3でupの13個、G1とG3で共通にupの16個を確認できた。これら遺伝子をプローブとして用い、公開されているデータ・セットをマトリックス表示法にて検定した所、G1とG3の群を明瞭に分離することができた。以上によりRunx1-MTG8とPEBP2β-SMMHCキメラ蛋白には、遺伝子発現に対して両者が共通に作用する局面と、各々に特異的な局面とが併存することが判明した。 (2)内在性のRunx1遺伝子は、遠位と近位の2つのプロモーターから転写されるが、各々の転写産物がコードする遠位Runx1蛋白と近位Runx1蛋白は、アミノ末端の19、又は5アミノ酸残基のみが互いに異なっている。2つのRunx1蛋白の機能の異同を明らかにする為に、各々をTリンパ球系列で過剰に発現するトランスジェニック・マウスを作製し解析した。遠位Runx1蛋白を過剰に発現する胸腺では、細胞の大部分がダブル・ネガティブ(DN)段階で停止し、ダブル・ポジティブ(DP)細胞が激減していた。DNからDPにおける細胞増殖には遠位Runx1蛋白が抑制的に機能することを示している。一方、近位Runx1蛋白にはそのような活性は観察されず、2つのRunx1アイソフォーム蛋白は異なる機能を担っているものと考えられた。
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