2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17013014
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
鈴木 聡 Akita University, 医学部, 客員教授 (10311565)
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Keywords | PTEN / P13キナーゼ / 癌抑制遺伝子 / 脂質 / ホスファターゼ / 肺胞上皮細胞 |
Research Abstract |
多くのサイトカイン、インスリンなど、様々な刺激によって、PI3Kが活性化される。活性化されたPI3Kはイノシトールリン脂質のうちPIP2をリン酸化してPIP3を産生する。PIP3は、Aktをはじめとする様々な下流のシグナル伝達系を活性化して細胞増殖、生存などの多様な情報伝達の役割を果たす。PTENはその主な基質をPIP3とする脂質ホスファターゼで、PI3K経路を負に制御する。我々はPTENの生体における機能を解析するためにPTEN全身欠損マウスを作製したが、このマウスは胎生早期に致死となったことから、次にPTENfloxマウスを作製し、平成19年度は主に肺胞上皮細胞におけるPTENの機能を解析することにした。 肺胞上皮細胞におけるPTENの機能解析することにした。 肺胞上皮細胞におけるPTENの機能解析:がんの死因の1位は肺がんで、増加の一途をたどっている。また肺がんのうち最多のものは肺腺がんであり、その約7割でPTEN蛋白質の発現の低下〜消失をみることが報告されている。そこで我々は肺におけるPTENの役割を明らかにするために、我々の作製したPTENfloxマウスと、(tetO)7-CreやSP-C-rtTAトランスジェニックマウスとを交配することによって、ドキシサイクリン投与によって肺胞細気管支上皮細胞特異的にPTENを欠損するマウスを作製した。肺胞細気管支上皮細胞特異的PTEN欠損マウスは、ほぼ全例自然肺腺がんを発症した。さらにこれらマウスでは発がん剤(ウレタン)投与による早期腫瘍形成が加速していた。さらにPTEN欠損マウスでは肺幹細胞(BASC)の増加を認めた。これまでに肺腺がんはBASC由来であることが示されていることを考えあわせると、PTEN欠損によるBASCの増加が肺腺がん発症の一因である可能性が示唆された。PTEN欠損マウスでは、細胞増殖や幹細胞維持に関わるAkt、c-Myc、Bcl-2、shhの活性化や発現亢進をみた。さらにPTEN欠損マウスでみられた肺腺がんでは高頻度にK-rasの変異が認められた。このようにPTEN欠損によるBASCの増加によって、肺幹細胞にK-rasなど他のがん関連遺伝子の変異がおこりやすくなり、これによって肺腺がんがおこる可能性が考えられた。
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