2006 Fiscal Year Annual Research Report
免疫寛容の解除による抗HTLV-1腫瘍治療方法の開発
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17013028
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
神奈木 真理 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (80202034)
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Keywords | ウイルス / 癌 / 細胞・組織 / トラスレーショナルリサーチ / 免疫学 / HTLV-I / ATL / ワクチン |
Research Abstract |
成人T細胞白血病(ATL)患者ではヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)特異的T細胞応答が乏しい。この低応答性の機序は明らかでない。本研究では、HTLV-Iに対する応答低下メカニズムの解明とその克服による治療への応用を目的としている。 我々はこれまでに、ラットへのHTLV-I経口感染ではHTLV-I特異的T細胞免疫が低く、プロウイルス量が高くなる傾向があることを示した。HTLV-Iプロウイルス量は感染細胞数を反映する。また、垂直感染はATLの疫学的リスクに挙げられているが、HTLV-I垂直感染の主な経路が母乳を介する経口感染であることから、ラットにおける観察は、垂直感染によるHTLV-I特異的T細胞の低応答性が感染細胞数の増加を許す一因となることを示唆している。 本年度は、経口感染による免疫不応答のため一旦増加した感染細胞数が、HTLV-I特異的T細胞免疫応答の回復により減少するかどうか調べた。まず、免疫正常ラットにHTLV-Iを経口感染させ7週後にHTLV-I感染細胞を不活化させたものを皮下免疫接種し、その後4週経ってから脾臓細胞を分離し、HTLV-I特異的細胞性免疫応答とHTLV-Iプロウイルス量を調べた。その結果、HTLV-Iを経口感染させただけの対照群に比べ、HTLV-I特異的T細胞増殖およびinterferon γ産生能とも活性化しているにもかかわらず、プロウイルス量は有意に低かった。次に、この免疫応答回復とウイルス量低下が同一個体で免疫後に起こっているか確かめるため、HTLV-Iの経口感染後20週以上経過したラットの脾臓を麻酔下に半切除し細胞を凍結保存した。創を止血縫合し1週間後にHTLV-I感染細胞を不活化させたものを同ラットの皮下に免疫接種し、さらにその後3-4週経ってから残脾を摘出し、脾細胞を凍結保存した。これらの脾細胞を比較した結果、免疫前に比べ免疫後にはHTLV-I特異的T細胞性応答が著しく回復し、HTLV-Iプロウイルス量は低下したことが確認された。 この結果は、HTLV-I特異的T細胞が積極的に生体内の感染細胞増殖を制御していることを示しており、低免疫応答個体に適切な免疫を行えば感染細胞数を減少できる可能性を示唆するものである。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Augmentation of chemokine production by severe acute respiratory syndrome coronavirus 3a/X1 and 7a/X4 proteins through NF-kappa B activation2006
Author(s)
Kanzawa, N., Nishigaki, K., Hayashi, T., Ishii, Y., Furukawa S., Nuro, A., Yasui F., Kohara, M., Morita, K., Matsushima, K., Le, M.Q., Masuda, T., Kannagi, M
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Journal Title
FEBS Lett 580
Pages: 6807-6812
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[Journal Article] Suppression of human immunodeficiency virus type 1 replication by arginine deiminase of Mycoplasma arginini.2006
Author(s)
Kubo, M., Nishitsuji, H., Kurihara, K., Hayashi, T., Masuda, T., Kannagi.M
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Journal Title
J Gen Virol 87
Pages: 1589-1593
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