2006 Fiscal Year Annual Research Report
DNA損傷バイパスに伴う突然変異の誘発とその抑制の分子メカニズム
Project/Area Number |
17013041
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大森 治夫 京都大学, ウイルス研究所, 助教授 (10127061)
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Keywords | DNA損傷 / 損傷バイパス / DNAポリメラーゼ / 突然変異 / 発がん / ベンゾピレン / 皮膚ガン / 肺がん |
Research Abstract |
DNA損傷によって点突然変異が誘発されることは古くから知られて来たが、現在ではそのような突然変異の大半はDNA損傷のバイパス合成に伴って生じると考えられている。ヒトやマウスにおいてDNA損傷バイパスに関わるDNAポリメラーゼは複数存在し、その代表例がPolηやPolκである。Polηが紫外線照射によって生じるT-T CPDなどを含めて比較的幅広いスペクトラムのDNA損傷をバイパスするのに対して、Polκは肺がんの有力原因物質と考えられるベンゾピレン(BP)の体内代謝物(BPDE)がグアニンのN2の位置に付加したdG-N2-BPDEなどのかなり限定された種類の損傷のバイパスに関与する。DNAに損傷を受けた細胞ではRad6-Rad18複合体によってPCNAがユビキチン化され、それが引き金となって複製型DNAポリメラーゼから損傷バイパス型のDNAポリメラーゼへのスイッチが起こると考えられており、実際BPDE処理したヒト培養細胞においてもPCNAがユビキチン化され、Polκがそれに結合することが明らかになった。Polηの場合にはRad18とも結合することが知られており、Rad6-Rad18-Polη複合体がPCNAをユビキチン化するとすぐにそれにPolηが結合することにより、Polηが損傷箇所に優先的にリクルートされると想定される。PolkもBPDE処理した細胞中ではRad18と結合するが、Polhの場合と比べて結合は弱いことが明らかになった。一方、酵母ツーハイブリッド法を用いてPCNA、ユビキチン、Rad18との相互作用について検討したが、PolκはPolηと比べるといずれに対しても相互作用は弱いという結果が得られた。BPDE処理した細胞中ではPolκはリン酸化などの修飾を受けることにより、ユビキチン化を受けたPCNAに強く結合できるようになるという可能性が考えられる。
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