2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17013046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松岡 雅雄 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (10244138)
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Keywords | ヒトT細胞白血病ウイルス / 成人T細胞白血病 / がんウイルス / tax / RNA / DNAメチル化 |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)による成人T細胞白血病(ATL)の発がん機構解明のために以下の点を明らかにした。 1)HTLV-IプロウイルスのDNAメチル化が内部より起こり進展していくことを明らかにした(Taniguchi et al. Retrovirology,2005)。ATL細胞では5'LTRにおけるメチル化が強い場合が多くtax遺伝子発現を抑制する機序と考えられた。全てのATL細胞で3'LTRはメチル化されていなかった。 2)HTLV-Iプロウイルスのマイナス鎖にコードされるHBZ遺伝子の新たなスプライシングを同定し全てのATL細胞で発現していることを明らかにした(Satou et al, PNAS,2006)。shRNAによるHBZ遺伝子の発現抑制によりATL細胞の増殖が抑制されたこと、ヒトT細胞株にHBZを発現させ増殖促進効果が認められたことなどからHBZ遺伝子がATL細胞の増殖に関与することを明らかにした。DNA chipによる解析からHBZ遺伝子の発現によりE2F1遺伝子の転写活性化が起こることが示された。HBZ遺伝子はタンパク質としてはTaxによるウイルス遺伝子の転写活性化を抑制するが増殖促進にはRNAが関与することを示した。HBZ遺伝子をマウスCD4特異的プロモーター・エンハンサーによって発現させた所、脾臓でCD4陽性細胞数の増加を認め生体内でもHBZ遺伝子が増殖促進効果を有することが明らかとなった。 3)5'LTRが欠損しているプロウイルスを有するATL細胞の解析から、この欠損が組み込み前後で起こっていることを明らかにした。組み込み後の欠損はTaxの発現を失うことで宿主免疫機構を回避していることが示唆された。このような5'LTRを欠くプロウイルスでもHBZ遺伝子は保たれており発がん機構におけるHBZ遺伝子の重要性を示唆する知見であると考えられた。
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