2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17013046
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松岡 雅雄 Kyoto University, ウイルス研究所, 教授 (10244138)
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Keywords | ヒトT細胞白血病ウイルス1型 / 成人T細胞白血病 / HBZ / Tax / ウイルス発がん / レトロウイルス |
Research Abstract |
本研究ではヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-cell leukemia virus type I: HTLV-1)によるATL発がんの分子機構を明らかにすることを目的とした。 1) ATL症例、キャリアの全プロウイルス配列を決定し、、gag, pol, envの構造遺伝子だけでなく、tax, rexの調節遺伝子、p12, p13, p30のアクセサリ遺伝子に多くのnon-sense変異、欠失を見いだしたが、HBZ遺伝子には全くそのような変異・欠失は認められなかった。tax遺伝子には60例中、10例でナンセンス変異、欠失等を認めた。ナンセンス変異は同定された29変異の内、27変異がトリプトファンに起こっていた。変異部分の塩基配列をみるとTGGがTGA, TAGというストップコドンに変わっていた。このG-to-A変異はレトロウイルスの逆転写反応の際にAPOBEC3Gによって起こる変異と一致しており、APOBEC3Gの関与が疑われた。全プロウイルス中の塩基配列の解析からG-to-A変異はTGG, CGGを標的にしておりAPOBEC3Gの標的配列と一致していた。以上の結果からATL症例のプロウイルスに認められたナンセンス変異はAPOBEC3Gによりウイルス感染時に形成されていることが明らかとなった。 2) HBZ遺伝子結合宿主因子の探索 Yeast two-hybrid法を用いてHBZタンパク質の各ドメイン(bZIP, activation domain)と結合する宿主因子を網羅的に探索し、ATF3, Dapleを同定した。ATF3はATL細胞で発現上昇しており、その発現抑制は細胞増殖を抑制した。DapleはTaxによるWntシグナル活性化を著しく亢進し、HBZは、その増強作用を抑制した。TaxとHBZとの複雑な拮抗作用にDapleが関与することが示された。
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