2008 Fiscal Year Annual Research Report
RNAプライマーゼGANPの発癌における機能の研究
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17013069
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阪口 薫雄 Kumamoto University, 大学院・医学薬学研究部, 教授 (70192086)
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / 細胞・組織 / ストレス / 生体分子 |
Research Abstract |
B細胞が免疫応答において、抗原レセプター遺伝子のV領域に体細胞突然変異を誘導するその分子メカニズムにおいて必須な分子としてGANPを同定している。本研究においてGANPが細胞の様々なストレスによって誘導されるDNA損傷時に機能し、DNA double strand breaks(DSBs)誘導時の遺伝子修復、特に相同組み替えにおける制御機能を強力に示すことをin vitroの相同組み替え系において明らかにした。この結果はほ乳動物における遺伝子転写時におこるDNA損傷から誘発される、過剰な異常相同組み替えを抑制するシステムとしてGANPが顕著な活性を有することを明らかにした。これまでGANP分子が遺伝子修復において機能することを確定しているので、今年度はGANP分子の異常がどのようにリンパ細胞やその他の細胞の発がん・悪性化を引き起こすのか、その活性の異常がなぜ実験動物において高頻度に乳がんを発症するのか、なぜ乳がんに選択的に発がんを誘導するのかを明らかにする解析をすすめた。乳癌細胞の発がんにはGANPの欠損及び発現低下が関与すること、そしてその作用は細胞周期、細胞分裂、細胞維持に関わる分子の転写、mRNA保持、タンパク産生に至る過程で障害を起こし、激しいpolyploidy, aneuploidyをもたらすことを見いだした(Kuwahara et.al., submitted)。さらにその障害は遺伝子修復系で、細胞周期を停止する機能を動員し、「細胞老化」の状態を引き起こしていることを明らかにした(Ohta et.al., submitted)。この結果GANP発現の異常が自然発症の乳がん、悪性グリオーマ、胆道がんにおける発がんの悪性誘因、増悪因子として重要な意味を有することを見いだした。
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