2009 Fiscal Year Annual Research Report
RNAプライマーゼGANPの発癌における機能の研究
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17013069
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
阪口 薫雄 Kumamoto University, 大学院・生命科学研究部, 教授 (70192086)
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Keywords | 遺伝子 / 癌 / 細胞・組織 / ストレス / 生体分子 |
Research Abstract |
Germinal center B cell-associated nuclear protein (GANP)は210-kDaの核内タンパク質として見つけられた哺乳動物特有の分子である。構造上3つの特徴を有している。N末端側のRNA primase領域、中間部分のmRNA輸送分子としての領域、C末端側のヒストンアセチル化酵素領域はそれぞれの機能を発揮し、mRNA輸送とDNA修復に関連する。GANP過剰発現も、欠損もともに細胞の腫瘍化を起こすことが明らかになっている。本研究では、GANP異常による腫瘍化の分子機構の解析を行った。乳がん臨床検体を用いた解析から、GANPの異常発現は、は正常乳腺組織ではほとんど見られない。発がんやその悪性転化の際にGANPの転写異常を引き起こし、腫瘍化の進行を促しているもと考えられる。GANP欠損を乳腺組織特異的にホモ欠損させたマウスによって解析し、さらに、GANP欠損がどのように乳腺細胞のがん化を誘導するのかを細胞周期、細胞老化、チェックポイント分子の機能と関連して標的を同定した。GANPは哺乳動物の細胞分裂において染色体を規則正しく娘細胞に分配するshugoshin 1のmRNA輸送を行うことが示された(論文発表)。また、GANPは細胞周期の進展に必須で、その発現低下はG1/SチェックポイントにおいてDNA損傷反応のp16→Rbの経路による細胞周期停止をほぼ恒久的に誘導する細胞老化をきたした。その結果、SA-β-galactosidase活性を示し、核内DNAの変化を誘導した(論文発表)。これらから、脳内グリア細胞、乳腺組織細胞における細胞老化誘導から発がんに至る分子機構のモデルを提示した。生体におけるsporadicな発がんにおける炎症、生体代謝産物蓄積などから引き起こされる発がん過程の解明にGANPの発現低下が重要な分子変化であることが明らかになった。
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