2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17013070
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80264282)
|
Keywords | 細胞分裂 / タンパク分解 / リン酸化 / オーロラキナーゼ / APC / 遺伝子改変マウス / 細胞死 / 細胞老化 |
Research Abstract |
細胞分裂は染色体と細胞質内の要素を正確に二分する重要なステップである。したがって細胞分裂をひかえたG2期からM期進行の調節機構破綻は細胞の形質にドラスティックな変化を引き起こし、ゲノムの不安定化を誘発する。G2期からM期の進行は(1)タンパク分解、(2)タンパクリン酸化という2つの生化学的イヴェントによって制御されていることが近年の研究により明らかにされつつある。主として、前者においてはanaphase promoting complex(APC)と呼ばれるユビキチンリガーゼ、後者では分裂期キナーゼと呼ばれる一群のリン酸化酵素が重要な役割を演じていることが明らかにされている。本研究はこれらG2/M期における細胞周期進行制御の分子機構の解析とその破綻による腫瘍化のメカニズムを明確にし、最終的にはがん治療のための標的を見出すことを目的として実施した。以下に本年度の主な成果を挙げる。 【1】Cdh1トラップマウスの作成:細胞分裂期後期に活性化して様々なタンパク質をユビキチン化一分解に導くAPC<^cdh1>複合体の機能を明らかにするため、Cdh1トラップマウスを作成したところ、胎生9.5〜10.5日で胎生致死となったが、胎盤の形成不全がその原因である可能性が組織所見より示唆された。とくに巨核細胞層の形成が完全に抑制されており、生理的な多倍体化にCdhlの活性が関与していることが明らかになった。 【2】分裂期キナーゼの一つであるWartsキナーゼの生理的な役割について解析を行ったところ、細胞の老化に呼応してWartsキナーゼの発現量が低下し、そのために細胞質分裂が抑制されて多倍体が形成される可能性が示唆された。 【3】分裂期チェックポイントにおいて活性化されるMpslキナーゼが、分裂中期においてAPCのコンポーネントであるCdc27と結合し、それをリン酸化することを見出した。Cdc27のリン酸化はAPCの活性を抑制し、細胞を分裂中期に停止させることが分かった。
|