2009 Fiscal Year Annual Research Report
p53遺伝子ファミリーの機能解析とがん治療への応用
Project/Area Number |
17013072
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
時野 隆至 Sapporo Medical University, 医学部, 教授 (40202197)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / p53 / p63 / p73 / 遺伝子治療 / ウイルスベクター |
Research Abstract |
p53はヒト悪性腫瘍において最も高頻度に異常が認められる遺伝子である。p53変異は癌の悪性度や予後にかかわっており、p53の機能を解明することは癌の診断・治療の上で重要ある。本年度はcDNAマイクロアレイにより、p53ファミリーによって発現が変化する分子の同定とその機能解析を行なった。 その結果、(1)新規のp53ファミリー標的遺伝子としてhuman calcium-activated chloride channe1-2(hCLCA2)を同定した。hCLCA2の遺伝子およびタンパク発現はp53依存的に誘導され、hCLCA2ゲノム上に種を越えて保存される特異的応答配列を見いだした。さらに,hCLCA2の強制発現系、siRNAによる発現抑制系を構築し、hCLCA2が癌細胞の浸潤能、遊走能、接着能を抑制しうることを明らかにした。hCLCA2は細胞膜上に局在するCa活性化Clチャネル関連分子であり、本研究結果はp53ファミリーがhCLCA2の発現制御を介して、癌の浸潤、転移を抑制していることを示した。 さらに、(2)p53ファミリーの標的遺伝子early growth response-2(EGR2)の同定、転写制御機構および、その機能解析として腫瘍細胞に対する増殖抑制効果を検討した。p53ファミリーの強制発現により内在性EGR2の発現が上昇した。DNA障害後のEGR2の発現誘導は正常型p53の存在に依存していた。EGR2遺伝子のプロモーター領域に種を越えて保存されるp53結合配列が認められ、この配列がp53に転写応答することを示し、EGR2がp53ファミリーの直接の転写標的であることを明らかにした。EGR2を標的としたsiRNAは癌細胞の増殖能を有意に促進し、抗癌剤に抵抗性となり、アポトーシスを抑制した。一方、EGR2の癌細胞への導入は増殖抑制とアポトーシス誘導をもたらした。EGR2は、胃、大腸、肺、乳癌で遺伝子発現が低下していることが既に報告されており、EGR2がp53の下流で腫瘍抑制分子として機能していることが示唆された。
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